テカポ湖で星を見てきました

ニュージーランド・テカポ湖に星を見に行ってきました。テカポは世界一星空が美しいと言われているので、天体観測が趣味の私はいつか行きたいと思っていました。 テカポのベストシーズンは4月〜8月と言われていて、訳あって4月に時間ができたので、新月のタイミングを狙って行ってみることにしました。4/16が新月だったので、その日を挟んで4/14-18の4泊5日間滞在しました。

retrip.jp

日本からのアクセスは、まず北島のオークランドに飛んで、そこからクライストチャーチクイーンズタウンを目指すのが一般的なようです。だいたい合計12時間くらいのフライトになります。 空港からテカポまでは、バスかレンタカーでの移動がよいようです。クライストチャーチからは1日に1回バスが出ているようなのですが、飛行機のタイミングとうまく合わず、余計に一泊する必要がありそうだったので、私はクライストチャーチでレンタカーを借りることにしました。 海外での運転は、去年の北米皆既日食のときにアメリカで経験していました。そのときに取得した国際免許がまだ有効でした。ニュージーランドは日本と交通ルールが似ていて、左側通行・右ハンドルで、速度はkm表記なのでアメリカよりだいぶ日本人向けだと思います。また、レンタカーの料金は保険込みで1日5000円くらいで、アメリカで借りたときの半額くらいでした。車があると現地での移動や機材の運搬も楽なので、レンタカーはおすすめかなと思います。

ニュージーランドの歩き方 - ニュージーランドの交通ルール

クライストチャーチからテカポまでは、だいたい3時間くらいかかります。飛行機に12時間くらい乗った後、3時間くらい運転するのはきつかったですが、交通ルールをあまり気にしなくていいのでアメリカでの運転より楽だった気がします。テカポへの道中では、サービスエリアのようなものはなく、景色の99%が草原でたまに羊がいっぱいいるような感じだったので、だいぶ眠くなりました。さすが人間より羊の方が多いニュージーランドです。途中にアシュバートンという大きめの町があるので、そこで休憩しました。途中での給油は必要ありませんでしたが、ガソリンスタンドは何十kmもないので、半分を切ったら給油するくらいでちょうどいいと思います。

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経路はほぼ1号線と8号線だけなので難しくないと思います。ナビはGoogle Mapのアプリで充分だと思います。途中79号線を通るほうが少し早いようなのですが、山越えで50kmくらい何もなくてしんどかったので、次に行くことがあったら上のような経路で行くと思います。

www.booking.com

テカポでの宿はAirbnbバックパッカー向けのホステルを予約しました。ホテルもありますが、1泊2万円以上してちょっと高めなところが多いようです。夜は星ばかり見ているのと、近くにスーパーやレストランがあって食事に困ることもなさそうだったので、私は安めのホステルでちょうどよかったかなと思います。3人部屋しか空いていなかったので、1人で3人部屋を占有してましたすみません :-p

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ホステルの庭からでも余裕で天の川が見えるすばらしいところでした。天気を見ながらちょっと庭に出て撮影できるのは楽でした。

テカポ湖に来たら、まず多くの人は湖畔にある善き羊飼いの教会を目指すと思います。

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私は初日に到着したのは日没直後くらいでした。宿にとりあえずチェックインした後、善き羊飼いの教会の近くに行ってみました。夜7時台から真っ暗で、空には見たことないくらい濃い天の川と南天の星空が見えて感動しました。

善き羊飼いの教会の周辺で、天の川は十分に見えます。しかし、有名観光地なのでヘッドライトを点けた車が深夜でもひっきりなしに出入りするので、写真撮影にはまったく向いていません。ヘッドライトが被ってひどいことになります。被ってもここまで天の川が写っているのはすごいのですが。

たぶんみなさん南半球に来たからには南天の空を撮影したいであろうと思うので、写真撮影するなら、テカポの村を少し南に抜けたあたりがおすすめです(地図上の赤いポインタのあたり)。このあたりは南側にまったく明かりがなく、南天の撮影には絶好の条件でした。

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昼間は特にやることを決めていなかったので、テカポ湖の西のマウントジョンにある天文台に行ってみました。テカポ湖から車で15分くらいで頂上まで行けます。通行に8NZDかかります。歩いて登るのは無料です。夜は道路が閉鎖されて、有料のツアーの申込者だけが入れるようになるようです。団体行動が苦手なので私は行きませんでしたが、地上よりも星空がさらによく見えて、天文台から望遠鏡で星を見たりできるようなので、行ってみる価値はあると思います。ツアーは150NZDほどかかります。テカポ村のスーパー(4 SQUARE)の横に受付があります。

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頂上からは、エメラルドグリーンのテカポ湖が見えて、すばらしい眺めでした。昼間に行くのもおすすめです。

ニュージーランドの4月は秋です。昼は15度くらいまで上がるので、日本の4月とそんなに変わらないかなと思いますが、昼夜の気温差はわりと大きく、夜は氷点下まで下がりました。真冬用の防寒着を持って行ったのでちょうどよかったです。6月〜8月は真冬になってしまうので、日本からニュージーランドに行くなら気温差が比較的小さい4月はベストかもしれません。

テカポに4泊滞在して、4晩とも天の川が見える天気に恵まれました。ニュージーランドの天気は「1日で全ての季節がやってくる」と例えられることもあるほどに、非常に変わりやすいです。4日中2日は夜に雨が降りましたが、待っていると快晴になりました。私はweather.com(iPhoneの天気予報)で1時間単位の天気予報をチェックして行動していました。weather.comの予報は1時間単位でかなり的確に当たっていたように思います。最近の天気予報はよく当たります。なので、雨が降っていても諦めないで、晴れそうな時間まで寝て待っていました。

今回の機材は以下のような感じです。北米皆既日食のときとだいたい同じで、BORG 71FL、α7S、ポラリエの軽量トリオを持って行きました。ポラリエは南半球にも対応しています。

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  • 望遠鏡
    • BORG 71FL
    • BORG 7872 x0.72レデューサ
    • BORG 6015 ミニボーグDX-LD鏡筒
    • BORG 7761 M57ヘリコイドDXII
    • BORG 7000+5005+八仙堂 EOS EF → SONY E マウントアダプター(この組み合わせはフルサイズでも四隅がケラレません。また、5005に48mmフィルターを取り付けることができます。)
    • BORG 0037 ファインダー
  • カメラ
    • SONY α7S
    • ロワジャパン タイマー機能付きリモートレリーズ
  • 三脚・赤道儀
    • Vixen 星空雲台ポラリエ
    • BORG 3101 片持ちフォーク式赤道儀
    • SIRUI トラベラー三脚 T-2005X
    • SIRUI 2ウェイ雲台 L-20S

赤道儀を使うときはまず極軸を合わせないといけません。北半球では北極星というわかりやすい目印がありますが、南半球の場合は「南極星」のようなものはありません。代わりに、はちぶんぎ座という星座の中にある5〜6等星の暗い星で構成される台形の形を目安にするのですが、知識としては知っていましたが実際に南天の星空を見てもさっぱりわかりませんでした。3日目まではポラリエのポーラメータで大雑把に合わせていました。30秒くらいしか露出しないのでそれでも十分なのですが、ちょっと悔しいので勉強して、最終日にようやく台形を見つけられるようになりました。台形は、8倍の双眼鏡で視野いっぱいによく見えました。探し方はいくつかありますが、小マゼラン雲から辿るのがいちばんわかりやすいと思いました。こちらのサイトを参考にしました。 ryutao.main.jp

今回、初のニュージーランド・初の南半球で、テカポの世界一の星空を見ることができて感動しました。この先どんな星空を見ても満足できない贅沢な体になってしまった気もしますが、最高の星空を見ることができてよかったです。またいつか来てみたいです。

71FL+レデューサー7872セット 6472

71FL+レデューサー7872セット 6472

  • メディア: エレクトロニクス

CISSP受験体験記

概要

CISSPの試験に合格しました。勉強期間は約4週間で、幸い一発合格できました。

CISSPは米国発のセキュリティの認定資格で、国際的に認められています。セキュリティ業界では有名な資格ですが、日本ではCiscoOracleの資格と比べるとあまり知名度はないかもしれません。

試験の内容は、NDAにより一切口外してはいけないことになっているので、勉強方法や受験の流れについて振り返ってみたいと思います。

CISSPを目指す方の一助になれば幸いです。

勉強方法

まず、CISSPの試験はそれなりに難しいです。少なくとも、IPA情報セキュリティスペシャリスト(今は情報処理安全確保支援士というださい名前の試験に変更)と同等かそれ以上の難易度という感想です。 難しいと思った理由は主に3つです。

(1) 範囲がすごく広い

CISSPの試験範囲は8つのドメインに分かれていますが、その1つ1つで本が何冊も書けるんじゃないかというほど広いです。 問題集には、裁判の進め方からNmapコマンドのオプションまで出てきます。全てに精通しているような人は超人だと思います。 私は、IPAネットワークスペシャリスト情報セキュリティスペシャリストを取得していますが、それでもカバーできるドメインはせいぜい3つか4つくらいだと思います。

(2) 問われる内容がそれなりに深い

出題形式はだいたい4択問題なので、IPA情報処理技術者試験の午前問題と似たような感じですが、同等と思うのは甘いです。午後問題程度のそれなりに深い内容を問われると思った方がよいと思います。 出てくる用語もそれなりに難解です。例えば、Certification と Accreditation の違いとか。日本語だと認証と公認という感じで違いがよくわかりませんが、両者は違います。 試験は日本語で受けられますが、外資系ベンダの試験にありがちな感じで、日本語だと意味がわからなかったり、誤訳としか思えないところもあるとかないとか。英語の原文も同じ画面で確認することができるので、英語の原文を必ず確認した方がよいと思いました。

(3) 独特で曖昧な問題が多い

この3つ目が最大の難関だと思います。問題に対する答えを覚えるだけでは全く歯が立たないと思います。 表現するのは難しいですが、自分の主観は捨てて、「CISSPであればそう考えるべきである」というような視点が必要だと思います。 CISSPは、現実的でビジネス(経営者)寄りな視点を求められるので、例えば、リスクマネジメントの目標が問われるような場合は、「リスクを完全に無くす」のではなく「(経営者が)リスクを許容できるレベルにする」のような選択肢がおそらく正解に近いんじゃないかと思います。 これは、問題集をやってみるとわかると思いますが、何を言っているのかさっぱりわからない問題が出てくると思います。私もそうでしたが、「CISSPにあるべき視点」のようなものを意識して、慣れてくるとなんとなく正解が見えてくるようになってきたと思います。

CISSPの一般的な勉強方法として、NRIさんがやってる1週間のセミナーがあります。しかし、私は未受講です。 セミナーの評判は良いのですが、受講に50万円くらいかかるのが大きな障壁です。これを受講するのは会社のサポートがないと厳しいでしょうね。 独学だと知識の偏りが気になるので、合格後でもなんとかして受講したいところです。

https://www.nri-secure.co.jp/service/isc2/cissp.html

以下に、私が勉強に用いた教材を紹介していきたいと思います。

CISSP認定試験 公式ガイドブック

CISSP認定試験 公式ガイドブック

数少ない日本語の本です。なんとなく購入していましたが、あまりの厚さに3分の1ほど読んで挫折しました。現在は絶版になっていて、新版が予定されているようですが、紙の本はいらないかなと思います。(売却してしまいました...)

新版 CISSP CBK 公式ガイド

新版 CISSP CBK 公式ガイド

  • 発売日: 2018/09/20
  • メディア: Kindle

こちらが新版です。だいぶ値上がりしましたね。。

練習問題が1300問収録された本です。私はKindle版を購入しました。比較的お手頃な価格で非常におすすめです。 この本を購入すると、本と同じ内容のテストがWebで利用できるようになります。Webテストの作りがいいので本を読むことはほとんどなかったです。

ちなみに、Webテストの登録方法は、本のあるページに書いてある内容を入力するというものでした。セキュリティ的には弱いですね :-p

Webテストはこちら https://testbanks.wiley.com/

私はまず、このWebテストで50問ほどのミニテストを作ってなんとなく実力を判定してみました。初見でおおむね7割前後は得点できていたので、苦手なドメインを中心に後述の本を拾い読みして偏りを埋めるという勉強のやり方で進めました。 ネットワークセキュリティや暗号のところは初見で8割くらい得点できましたが、米国の法律や裁判のところはさっぱりわからず、半分くらいしか得点できませんでした。 IPA情報処理技術者試験でも法規の出題はありますが、午前問題でせいぜい数問とかなので、まるごと捨ててもなんとかなりますが、CISSPでは2,3割がそんな感じなので捨てるわけにはいかず苦労しました。考えてもわからない暗記物はかなり苦痛ですが、そういう試験なので仕方ありません。 暗記するしかない問題もありますが、大部分は考えないといけません。問題に対する答えを覚えるのではなく、なぜその答えになるのか、納得できるまで後述の本で該当箇所を勉強するのがよいと思います。

この本も非常におすすめです。これもKindle版を購入しました。こちらも登録するとWebテスト1421問を利用できるようになります。Webアプリの作りは前述の Practice Test のほうがしっかりしてます。

Webテストはこちら http://sybextestbanks.wiley.com/course/index/id/102

1000ページ以上ある辞書のような本なので、全部読むのは苦しいと思います。気になるところを拾い読みするだけでも充分勉強になると思いました。時間と根性がある人は全部読むととても勉強になると思います。 これももうすぐ新版が出るようです。

これも数少ない日本語の本です。半額になってたのでKindle版を購入してみました。 ちょっと内容が古く、ときどき誤訳じゃないかと思うところがあったりしますが、日本語で概要を捉えるにはよいんじゃないかと思います。章末の問題集が、公式の本よりひねられた感じになっていて、本番の雰囲気に近いような気がしました。

Official (ISC)² CISSP Study

Official (ISC)² CISSP Study

  • learnZapp
  • Education
  • $14.99

前述の Official Study Guide から、Exam Essencials と Review Questions を抜き出したようなアプリです。本があればいらない気はしますが、手軽にテストの練習ができて楽しいので、1200円がそれほど高いと思わなければ買ってもいいと思います。

申し込み~試験

福岡センタでの残念な出来事

2週間くらい勉強して、なんとなく模擬テストで8割くらい得点できていたので、そろそろ行けるかなと思って申し込むことにしました。受験するだけで7万円くらいかかる試験なので相当の覚悟が必要です。 現在のところ、日本では東京・大阪・福岡の3カ所でしか受験することができません。私が申し込もうとしたときには、東京・大阪は1ヶ月以上先までほとんど空いていませんでした。福岡だけはわりと空いていたので、たまには福岡まで旅行するのもいいかなと思って、福岡センタで受験することにしました。試験日は約2週間後にしました。

Pearson (ISC)² 認定試験 (ISC)2 :: ピアソンVUE

福岡センタは博多駅の近くにあるので、博多駅の近くで前泊しました。試験開始の30分ほど前に行き、静脈の登録や写真撮影などを行ないました。 CISSPの試験では、途中の休憩は自由で、試験ルームの外に出ることもできます。ただし、休憩中も時間は経過していきます。試験センタに来る前に、飲み物と軽食を買っておくのがよいと思います。

適当に休憩をはさみつつ、250問中150問ほど回答したところで、画面がフリーズしました。システム担当の方が慌てた感じで試験ルームに入ってきて、トラブルシューティングを始めました。どうやら、サーバのトラブルで、部屋にいた全員が影響を受けたようです。部屋には6人くらいいたと思いますが、4人くらいは試験を途中から再開できたようでした。しかし私ともう1人は、途中経過を復元できなくなってしまい、その日はもう再開できないと謝られてしまいました。 ピアソンで何回か別の試験を受けたことはありますが、こんなことは初めてです。思わぬトラブルで試験を中断されて困惑しましたが、こういうトラブルの時のシステム担当の方の気持ちは痛いほどよくわかるので、同情してしまいます。

別の日程での再試験を提案されましたが、私はわざわざ福岡まで来てるのでそれなりに旅費がかかっています。完全に先方の過失なので旅費を補填できないのか交渉しましたが、受験の規定に何が起きても受験料以上は保証できないとの記載があり、聞いてもらえませんでした。 再試験については、たまたま2日後に東京センタの空きができたようなので、東京センタで受験することとなりました。 旅費については無念な気持ちでいっぱいですが気持ちを切り替えるしかありません。わざわざ福岡まで来たのはいったい。博多でラーメンを食べて帰るだけの旅になってしまいました。

東京センタで再試験

東京センタは有楽町と新橋の中間くらいにある、帝国ホテルタワーの18階です。試験は9時からなので、30分くらい前に来て、同じように静脈の登録や写真撮影などを行ないました。

100問毎くらいに休憩を挟みつつ、2時間くらいで250問に回答しました。わからない問題にはマークを付けました。 250問一通り終わった後、50問くらいマークした問題を見直し、さらに250問全てを2回見直しました。 結局マークした50問くらいはよくわかりませんでしたが、合格基準はおおむね70%と言われていて、仮に全部外していても80%くらいは得点できているだろうと判断したので終了しました。 その時点で、3時間10分ほど経過していました。制限時間は6時間なので、時間的にはだいぶ余裕がありました。 朝の9時前から始めて、12時頃には終わっていたのでそれほどお腹も減らず、体力的にも余裕がありました。

試験終了後、結果はすぐにわかります。画面には何も出ませんが、受付で試験結果が紙で出力されます。結果を見ると、無事に合格していました。昔から、いつか取得しようと思っていた資格だったのでうれしかったです。 CISSPの試験では合格すると点数はわかりません。不合格だと弱かったドメインがわかるらしいです。

福岡で150問ほど進んでたので、本番の試験の傾向をなんとなく知ることができ、それを踏まえて余分に1日勉強できたので、再試験の時は気持ちに余裕があったように思います。結果的には良かったんじゃないかなと思いました。 合格してしまえば福岡でのトラブルもレア体験として笑い飛ばせるというものです。

今後の対応

今後は、(ISC)²に登録して正式にCISSPと認定される予定です。CISSPホルダーからの推薦(エンドースメント)が必要なので、知人のCISSPホルダーにお願いしようと思います。 知人にCISSPホルダーがいない場合は(ISC)²が直接認定してくれるようですが、レジュメを提出したりしないといけないようでちょっと面倒かもしれません。

CISSPの試験は、2018/4から大幅に変わるようなので、この記事の内容は古くなる可能性があります。最新の情報は(ISC)²のウェブサイトをご参照ください。

japan.isc2.org

最も大きな変更は、試験の方式がCAT(Computer Adaptive Testing)という方式になるところだと思います。問題数が250問から100問になり、時間も6時間から3時間に短縮されるようです。難易度はおそらく上がるのではないかと思います。 現行の250問の試験では、各ドメインの出題比率が決まっているので、苦手なドメインを得意なドメインである程度カバーできますが、CAT方式だと、おそらく最初に採点に関係ない苦手なドメインを見極めるための問題が出題されて、その後苦手なドメインの問題が重点的に出題されるような形式になるのではないかと思います。 これから受験される方は、苦手なドメインがなくなるよう、より満遍なく学習するようにがんばってください。

皆既月食 2018/1/31

2018/1/31は久しぶりの皆既月食でした。前回は2015/4/4でしたがこれは曇って見えなかったので、2014/10/8以来約3年3ヶ月ぶりでした。日食と比べて月食は見る機会が多いですが、それでも条件よく見られるのはせいぜい2,3年に1度なので貴重な機会です。 今回は天気が全国的に微妙で半分諦めていましたが、関東地方は皆既月食の前後だけ晴れるという奇跡のような天気に恵まれ、堪能することができました。写真もきれいに撮れて非常に満足しました。

f:id:shakemid:20180131205849j:plain 地球の影がわかるように写真を合成してみました。地球の直径は月のだいたい4倍ということがわかります。

3日前の時点で天気予報は曇時々晴で、きれいに見えるのはかなり厳しいかなと思っていました。

しかし、当日になると1時間予報で皆既月食がピークになる22時~23時は晴の予報になっていました。結果的にまさにこの通りになったので、weather.com(iPhoneの天気予報)恐るべし。最近の天気予報はほんとよく当たりますね。

月の出の時点ではまだ薄雲がかかっていて月はぼんやりとしか見えませんでした。

でも予報どおり徐々に雲が薄くなってきたので諦めず最強装備で出撃です。いつもの自宅マンションの通路から狙いました。

装備は以下のような感じで、月を撮影するにはかなりのハイスペックです。

  • 鏡筒: Celestron Edge HD800 2032mm, f/10
  • 赤道儀: Sky-Watcher EQ5GOTO
  • カメラ: SONY α7S

19:25ごろです。月が高くなってくると、かなり雲が薄くなり、満月がはっきり見えるようになりました。

Celestron Edge HD800, SONY α7S, 2032mm, f/10, ISO100, 1/160s

20:47ごろです。月が欠け始めました。この頃には雲はほぼ晴れていました。

Celestron Edge HD800, SONY α7S, 2032mm, f/10, ISO100, 1/200s

21:18ごろです。半分ほど欠けました。

Celestron Edge HD800, SONY α7S, 2032mm, f/10, ISO200, 1/160s

21:39ごろです。月の欠け際に見える青い帯をターコイズフリンジと言います。地球のオゾン層を通った光でこのように見えるそうです。

Celestron Edge HD800, SONY α7S, 2032mm, f/10, ISO800, 4s, ステライメージ8でトーンカーブ調整等。

22:03ごろです。皆既月食になりました。α7Sの絵画調HDRモードで撮影したらとても階調豊かに写りました。

Celestron Edge HD800, SONY α7S, 2032mm, f/10, ISO800, 2s, 絵画調HDRモードLowで撮影

22:29ごろです。食の最大です。この頃には天気は快晴になっていました。完璧な皆既月食を堪能することができました。

Celestron Edge HD800, SONY α7S, 2032mm, f/10, ISO800, 4s

これもα7Sの絵画調HDRモードで撮影しました。暗い部分は赤黒く、明るい部分は青っぽく、階調豊かに写りました。α7Sは皆既月食の撮影に相当適性があるように思います。

Celestron Edge HD800, SONY α7S, 2032mm, f/10, ISO800, 2s, 絵画調HDRモードLowで撮影, ステライメージ8でトーンカーブ調整等。

23:13ごろです。皆既後のターコイズフリンジがよく写ってます。

サブカメラのNEX-5Rで、広角レンズで2分おきくらいにタイムラプスっぽく撮影してみました。最後は少し曇りましたが、ほぼ全行程きれいに見えました。

SIGMA 19mm F2.8 DN Art, SONY NEX-5R, Siriuscompで合成

皆既月食の後に光輪が現れました。換算28mmで画面いっぱいなのでかなり大きいです。月暈(つきがさ・げつうん)と言うそうで、満月と薄雲の条件が揃ったときに現れるそこそこレアな事象のようです。この日は何かと奇跡的でした。

SIGMA 19mm F2.8 DN Art, SONY NEX-5R, 19mm, f/2.8, ISO1600, 1s, GIMPトーンカーブ調整等。

2011年のときと2014年のときとの比較です。2011年はカシオのコンデジ(EX-FH20)でふつうのカメラ三脚で撮影しました。当時はこれでも感動したものです。2014年は装備の本気度が上がって、Vixen A80MとSONY NEX-5Rで撮影しました。まだ赤道儀を持ってなかったのでポルタII経緯台で追尾しながら撮影するのはなかなか大変でした。 今回の装備は月を撮影するにはちょっと過剰すぎるくらいなのでとても快適に撮影できました。天体写真という奴は、投資額が結果に如実に表れやすいです。故に沼にハマりやすいとも言えます。私はかなり沼にどっぷりです。

というわけで、条件の良い皆既月食を存分に堪能できて非常に満足できました。次の皆既月食は2018/7/28ですが、これは日本では夜明け前で月入帯食となり、あまり条件が良くありません。今回ほど条件の良い皆既月食は2022/11/8まで待たないといけないようです。

Build GCC 7 on Solaris 11.3

GCCが7まで出てることにちょっと驚愕しつつ、なんとなくSolarisコンパイルしてみたメモです。 Solarisを使っているとコンパイルが趣味になりがちです。

GCC, the GNU Compiler Collection - GNU Project - Free Software Foundation (FSF)

環境

$ uname -a
SunOS mercury 5.11 11.3 i86pc i386 i86pc Solaris
$ gcc -v
Using built-in specs.
COLLECT_GCC=gcc
COLLECT_LTO_WRAPPER=/usr/gcc/4.5/lib/gcc/i386-pc-solaris2.11/4.5.2/lto-wrapper
Target: i386-pc-solaris2.11
Configured with: /builds/hudson/workspace/nightly-update/build/i386/components/gcc45/gcc-4.5.2/configure CC=/ws/on11update-tools/SUNWspro/sunstudio12.1/bin/cc CXX=/ws/on11update-tools/SUNWspro/sunstudio12.1/bin/CC --prefix=/usr/gcc/4.5 --mandir=/usr/gcc/4.5/share/man --bindir=/usr/gcc/4.5/bin --libdir=/usr/gcc/4.5/lib --sbindir=/usr/gcc/4.5/sbin --infodir=/usr/gcc/4.5/share/info --libexecdir=/usr/gcc/4.5/lib --enable-languages=c,c++,fortran,objc --enable-shared --with-gmp-include=/usr/include/gmp --with-mpfr-include=/usr/include/mpfr --without-gnu-ld --with-ld=/usr/bin/ld --with-gnu-as --with-as=/usr/gnu/bin/as CFLAGS='-g -O2 '
Thread model: posix
gcc version 4.5.2 (GCC)

ダウンロード・展開

$ wget http://ftp.tsukuba.wide.ad.jp/software/gcc/releases/gcc-7.2.0/gcc-7.2.0.tar.xz
...
$ tar Jxvf gcc-7.2.0.tar.xz
...
$ cd gcc-7.2.0
...

依存ライブラリ(gmp, mpfr, mpc, isl)のダウンロード

$ contrib/download_prerequisites
...

configure

$ ./configure \
  --prefix=/opt/gcc7 \
  --enable-languages=c,c++ \
  --enable-shared \
  --disable-bootstrap \
  --without-gnu-ld --with-ld=/usr/bin/ld \
  --with-gnu-as --with-as=/usr/gnu/bin/as \
  CC='gcc -m64' CXX='g++ -m64'

オプションはあんまりちゃんと吟味してませんが、なんとなくOS付属のgccを参考にしました。

make

$ gmake -j8
...
$ sudo gmake install
...

/opt/gcc7 配下にインストールされます。

$ /opt/gcc7/bin/gcc -v
Using built-in specs.
COLLECT_GCC=/opt/gcc7/bin/gcc
COLLECT_LTO_WRAPPER=/opt/gcc7/libexec/gcc/x86_64-pc-solaris2.11/7.2.0/lto-wrapper
Target: x86_64-pc-solaris2.11
Configured with: ./configure --prefix=/opt/gcc7 --enable-languages=c,c++ --enable-shared --disable-bootstrap --without-gnu-ld --with-ld=/usr/bin/ld --with-gnu-as --with-as=/usr/gnu/bin/as CC='gcc -m64' CXX='g++ -m64'
Thread model: posix
gcc version 7.2.0 (GCC)

戦場ヶ原で星を見てきました

9月の3連休は、台風18号の列島縦断で大荒れでしたが、転んでもただでは起きない精神で、台風一過の晴れ間を逃さず9/18の夜に天体観測しに行くことにしました。月齢的にも9/20が新月なのでちょうどいい時期です。 場所は、栃木県奥日光の戦場ヶ原にしました。戦場ヶ原は関東屈指の星空スポットとして有名なのでそのうち行きたいと思っていました。

www.tochigiji.or.jp

戦場ヶ原へは浦安から車でちょうど3時間くらいかかりました。公共交通機関もあるにはありますが、機材の運搬もあり、車内で仮眠することも考えると車の方が便利かなと思います。

天体観測スポットとして有名な、戦場ヶ原の三本松駐車場に着くと、すでに天体観測目当ての方々がたくさんいて、口径40cmくらいの巨大なSky-Watcherのドブソニアンや、タカハシの赤道儀と鏡筒など気合いの入った機材を展開している方もいました。私も赤道儀を持ってきたのでそれなりに重装備ですが、世の中上には上がいるものです。

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三本松駐車場では三本松茶屋がほぼ唯一の補給スポットになります。夜は18:30ラストオーダーで、19:00閉店と早めなので、明るいうちに到着して夕食を取り、機材を準備するのがよいと思います。トイレは24時間利用可能で、自動販売機もあるので、天体観測スポットとしてはかなり充実していると思います。

sanbonmatsu.moon.bindcloud.jp

天気は予報どおり快晴でした。台風は困りものですが、台風一過の晴れ間は見逃せません。写真左下の山は男体山です。戦場ヶ原はこの男体山の噴火でできたそうです。

標高1400mなので気温はかなり低いです。概ね東京より10度~20度くらい低いようです。その日は東京では30度を超える真夏日でしたが、戦場ヶ原では最高気温20度くらいで、最低気温は10度以下まで下がりました。真冬用の防寒着を持っていってちょうどよかったです。まだ真夏日の初秋でこれなので、冬だと雪山用の装備とかが必要だと思います。

日が沈むとすぐに辺りは暗くなり、19時台には肉眼で天の川が見えました。さすが評判どおりの暗さです。ただし、三本松駐車場は有名スポットだけあって、暗くなってからもヘッドライトを点けた車がひっきりなしに出入りしていました。望遠鏡を空に向けているぶんには大きな影響はありませんが、広角レンズで星景写真とかを撮るには駐車場から離れる必要がありそうです。

f:id:shakemid:20170921200500j:plain

戦場ヶ原の天の川。夜7時台から天の川が肉眼で見える暗さでした。 Samyang 14mm f/2.8, SONY α7S, ISO6400, 30s x16, 総露出時間 8分, ステライメージ8でスタック・トーンカーブ調整等, GIMPで微調整。

f:id:shakemid:20170921203622j:plain

夏の大三角と天の川。拡大すると迫力あります。 SONY SEL28F20, SONY α7S, 28mm, f/2.0, ISO6400, 30s x10, 総露出時間 5分, Sky-Watcher EQ5GOTOで追尾, ステライメージ8でスタック・トーンカーブ調整等, GIMPで微調整。

f:id:shakemid:20170921230734j:plain

NGC7000 The North America Nebula. はくちょう座のデネブの近くにある北アメリカ星雲。たしかにこれは北アメリカ。思っていたより大きく、フルサイズの画角でいっぱいに写りました。 BORG 71FL, 7108フラットナー, SONY α7S, 432mm, f/6.1, ISO12800 30s x10, 総露出時間 5分, Sky-Watcher EQ5GOTOで追尾, ステライメージ8でスタック・トーンカーブ調整等, GIMPで微調整。

f:id:shakemid:20170922230316j:plain

M16 The Eagle Nebula and M17 The Omega Nebula. わし星雲とオメガ星雲。夏の代表的な天体ですね。ノーマルカメラだとちょっと色が出づらい対象です。 BORG 71FL, 7108フラットナー, SONY α7S, 432mm, f/6.1, ISO12800 30s x10, 総露出時間 5分, Sky-Watcher EQ5GOTOで追尾, Lightroomで現像, ステライメージ8でスタック・トーンカーブ調整等, GIMPで微調整。

f:id:shakemid:20170924141111j:plain

NGC869/884 Double Cluster. ペルセウス座二重星団。秋の代表的な天体の一つです。宝石箱のような美しさです。 BORG 71FL, 7108フラットナー, SONY α7S, 432mm, f/6.1, ISO12800 30s x10, ISO25600 30s x10, 総露出時間 10分, Sky-Watcher EQ5GOTOで追尾, ステライメージ8でスタック、トーンカーブ調整等。

f:id:shakemid:20170921220524j:plain

NGC7293 The Helix Nebula. らせん星雲。M57 環状星雲と似ていますがこっちの方が大きいです。そのぶん淡いので都会ではほぼ見えません。 BORG 71FL, 7108フラットナー, SONY α7S, 432mm, f/6.1, ISO12800 30s x10, ISO25600 30s x10, 総露出時間 10分, Sky-Watcher EQ5GOTOで追尾, ステライメージ8でスタック・トーンカーブ調整等, GIMPで微調整。

f:id:shakemid:20170922232531j:plain

M51 Question Mark Galaxy. おもしろい形をした子持ち銀河。400mmではかなり小さいですが形はよく分かります。 BORG 71FL, 7108フラットナー, SONY α7S, 432mm, f/6.1, ISO12800 30s x10, 総露出時間 5分, Sky-Watcher EQ5GOTOで追尾, Lightroomで現像, ステライメージ8でスタック・トーンカーブ調整等, GIMPで微調整。

f:id:shakemid:20170921224549j:plain

M33 Triangulum Galaxy. さんかく座の銀河。銀河の腕がよく写っています。大きな銀河ですが淡いのでこれも都会ではほぼ見えません。 BORG 71FL, 7108フラットナー, SONY α7S, 432mm, f/6.1, ISO12800 30s x10, ISO25600 30s x10, 総露出時間 10分, Sky-Watcher EQ5GOTOで追尾, ステライメージ8でスタック・トーンカーブ調整等, GIMPで微調整。

f:id:shakemid:20170923002827j:plain

M31 Andromeda Galaxy. 秋の天体の代表格、アンドロメダ銀河。文句なくきれいに写ります。 BORG 71FL, 7108フラットナー, SONY α7S, 432mm, f/6.1, ISO6400 30s x10, ISO12800 30s x10, ISO25600 30s x10, 総露出時間 15分, Sky-Watcher EQ5GOTOで追尾, Lightroomで現像, ステライメージ8でスタック・トーンカーブ調整等, GIMPで微調整。

f:id:shakemid:20170923200158j:plain

M45 Pleiades. 夜が更けると東の空に見えてくるすばる。都会でもそれなりに写りますが戦場ヶ原だと青い星雲がはっきりと写ります。 BORG 71FL, 7108フラットナー, SONY α7S, 432mm, f/6.1, ISO12800 30s x10, 総露出時間 5分, Sky-Watcher EQ5GOTOで追尾, Lightroomで現像, ステライメージ8でスタック・トーンカーブ調整等, GIMPで微調整。

f:id:shakemid:20170923211113j:plain

M42 Great Orion Nebula. 冬の天体の代表格、オリオン星雲。夜更けには冬の天体を先取りできる季節です。これも都会でもそれなりに写りますが、はるかにきれいに写ります。 BORG 71FL, 7108フラットナー, SONY α7S, 432mm, f/6.1, ISO6400 x10, ISO12800 30s x8, 総露出時間 9分, Sky-Watcher EQ5GOTOで追尾, Lightroomで現像, ステライメージ8でスタック・トーンカーブ調整等, GIMPで微調整。

夜半過ぎには少し曇りましたが、概ね快晴ですばらしい星空を堪能することができました。戦場ヶ原よかったです。冬は寒さが厳しそうなので、また暑めの季節に訪れてみたいものです。

Solaris de USB温度計

自宅サーバを運用していると、家の温度を測ってグラフ化したくなるというニーズはそれなりにあるようで、多くのブログ記事等がヒットします。 情報を集めてみると、PCsensor社のTEMPerというシリーズのUSB温度計が、1000円くらいから入手できてよく使われているようです。

USB温度計! USB thermometer-528018

USB温度計! USB thermometer-528018

pcsensor.com

安いのでとりあえずAmazonで購入してみました。私が購入したのは Gold TEMPer という製品のようです。中国語混じりのちょっと怪しげなパッケージです。 ドライバCDが付いていますが、Windows用のソフトウェアしかないので無視することにします。

f:id:shakemid:20170901190536j:plain

検索すると、ラズパイやLinuxサーバでの動作成功例が見つけられましたが、私の家の自宅サーバSolarisなので、当然Solarisでやってみたくなります。

USBポートに挿してみて、cfgadmで見てみたところ、TEMPerV1.4 としてOSには正しく認識されているようです。これはいけそうな気がしてきました。

$ cfgadm -v
Ap_Id                          Receptacle   Occupant     Condition  Information
When         Type         Busy     Phys_Id
...
usb2/1.6                       connected    configured   ok         Mfg: RDing  Product: TEMPerV1.4  NConfigs: 1  Config: 0  <no cfg str descr>
unavailable  usb-device   n        /devices/pci@0,0/pci8086,2036@1d/hub@1:1.6
...

prtconfで見ると、VendorID:0c45, ProductID:7401 のデバイスであることがわかります。

$ prtconf -v
System Configuration:  Oracle Corporation  i86pc
Memory size: 8106 Megabytes
System Peripherals (Software Nodes):

...
                        name='usb-product-name' type=string items=1
                            value='TEMPerV1.4'
                        name='usb-vendor-name' type=string items=1
                            value='RDing'
...
                        name='usb-product-id' type=int items=1
                            value=00007401
                        name='usb-vendor-id' type=int items=1
                            value=00000c45
...

メーカーサイトではWindows用のソフトウェアしか公開されていないようですが、USBプロトコルアナライザで解析して作られたと思われるLinux用のドライバを作っている方がいました。

https://relavak.wordpress.com/2009/10/17/temper-temperature-sensor-linux-driver/

このブログのレスの中にある pcsensor-0.0.1 は、 0c45:7401 のデバイスに対応しているようなので、試してみることにしました。Linux用ですが、カーネルモジュールではなく、ユーザモードで動作するlibusbというライブラリを使って作られているので、Linuxでなくても動作すると期待できます。実際、FreeBSDでの動作成功例も見つけることができました。

ymlab.hatenablog.com

Solarisでとりあえずmakeしてみましたが、だめでした。

$ tar zxvf pcsensor-0.0.1.tar.gz
$ cd pcsensor-0.0.1
$ CC=gcc make
gcc -DUNIT_TEST -o pcsensor pcsensor.c -lusb
pcsensor.c: In function 'interrupt_read':
pcsensor.c:235:5: warning: incompatible implicit declaration of built-in function 'bzero'
pcsensor.c: In function 'interrupt_read_temperatura':
pcsensor.c:254:5: warning: incompatible implicit declaration of built-in function 'bzero'
Undefined                       first referenced
 symbol                             in file
usb_detach_kernel_driver_np         /var/tmp//ccUZxvwd.o
ld: fatal: symbol referencing errors
collect2: ld returned 1 exit status
make: *** [pcsensor] Error 1

libusbのドキュメントを見たところ、usb_detach_kernel_driver_np はLinux専用の関数のようなので、コメントアウトしてみたところ、makeは通るようになりました。

http://www.electric-spoon.com/doc/libusb-dev/html/function.usbdetachkerneldrivernp.html

$ diff pcsensor.c.orig pcsensor.c
77c77
<       ret = usb_detach_kernel_driver_np(lvr_winusb, iInterface);
---
>       ret = 1; //usb_detach_kernel_driver_np(lvr_winusb, iInterface);

実行してみたところ、デバイスを見つけてはいるようなのですが、claimのところでうまくいってないようでした。(後述のmodunloadしてもだめでした)

$ sudo ./pcsensor -v
...
lvr_winusb with Vendor Id: c45 and Product Id: 7401 found.
usb_open: device ptr is 0x8065f68
usb_open: pindex = 0
Detach failed: Error 0[0]
Continuing anyway
Detach failed: Error 0[0]
Continuing anyway
Could not claim interface

libusbのバージョンには0.1系と1.0系があり、このドライバは0.1系を使っていました。libusb-1.0のドキュメントを見ると、Solarisを正式サポートしているようなので、1.0系に対応すれば動作するかもしれないと思いました。

github.com

Linux用のドライバ(pcsensorまたはtemper)は派生版がたくさんあるようでしたが、libusb-1.0に対応しているものは見つけられなかったので、対応する意味はそれなりにありそうです。

libusb-0.1系と1.0系ではAPIが異なっており、互換性がありません。とはいえ、関数名はだいたい先頭を usb から libusb に置き換えたものが同等の機能のようなので、ドキュメントを眺めつつなんとなく似た名前の関数に置き換えていきました。libusbの使い方がちょっとだけわかったような気がします。

丸1日ほど格闘した結果、なんとなく動くようになったのでGithubに上げました。

github.com

Solaris 11 と RHEL 6(CentOS 6)で正常に動作することを確認しています。いくつかの派生版で、複数デバイスに対応する機能追加が行われていたので、それも取り込んでいます。

Solaris 11 だと↓のような感じでビルドできます。事前にgccとlibusb-1を入れておいてください。

$ sudo pkg install gcc libusb-1
...
$ git clone https://github.com/shakemid/pcsensor-temper
$ cd pcsensor-temper
$ make
...
$ sudo ./pcsensor.sh
...

複数デバイスがある場合は、↓のような感じで列挙されます。1つのデバイスに2つのセンサが付いているものにも対応していますが、私のものは2つ目のセンサ(external)はないので異常な値になっています。

$ sudo ./pcsensor
2017/08/31 19:00:35
Temperature (0:internal) 81.28F 27.38C
Temperature (0:external) 214.60F 101.45C
2017/08/31 19:00:35
Temperature (1:internal) 81.16F 27.31C
Temperature (1:external) 214.60F 101.45C
...

また、Muninでグラフ化できるようにプラグインも作ってみました。Githubの同じリポジトリの中に置いてあります。

github.com

MuninのRRDにはキャリブレーションしていない生の値を記録し、CDEF機能で補正するような作りにしてあります。補正した値をRRDに格納してもよいですが、CDEF機能を使うと、後でキャリブレーションをやり直しても以前に取得した値も補正できる利点があります。 CDEF機能はとっつきづらいですが、逆ポーランド記法(RPN)でRRDに格納された値に様々な計算を加えることができるRRDtoolの機能で、いろいろと応用が利きます。

RRDtool - rrdgraph_rpn

上記のプラグインの場合は、たとえば↓のように env.cdef オプションで比率とオフセット値を設定できるようになっています。

/path/to/munin/etc/plugin-conf.d/temper
----
[temper]
    user root
    env.pcsensor /usr/local/bin/pcsensor
    env.cdef  temperature,1.0287,*,0.85,-

TEMPerのキャリブレーションについては↓の記事がわかりやすいと思います。

www.okahiro.info

Muninでグラフ化すると↓のような感じになります。さすがに8月の室内は30度を超えて暑いですね。

f:id:shakemid:20170901191455p:plain

詳細は不明なのですが、どうも16回データを取得すると、17回目にデータを取得できなくなるような事象に遭遇しました。

$ sudo pcsensor
2017/09/01 19:14:57
Temperature (0:internal) 89.60F 32.00C
Temperature (0:external) 214.60F 101.45C

16回繰り返す

$ sudo pcsensor
USB read failed: 0
USB interrupt read: File descriptor in bad state
Fatal error> USB read failed

↓で議論されているのと同じ事象のように見えますが、どうも解決していないようです。 github.com

Linuxだと、もう一度実行すると温度を取得できるようなのですが、Solarisだと何度実行しても取得できないままでした。 この状態のときは、何かがUSBデバイスをロックしているように見えたので、HIDドライバをmodunloadしてみたところ、温度を取得できるようになりました。

$ sudo cat /dev/usb/c45.7401/0/if0in1
cat: /dev/usb/c45.7401/0/if0in1: Device busy

$ modinfo | grep hid
168 fffffffff7e5d000   5858  20   1  hid (USB HID Client Driver)
...

$ sudo modunload -i 168
...

これはちょっとあんまりな気がするのでもっといい方法があるとよいのですが、今のところ他に方法を見つけられていないので、HIDドライバをmodunloadしてpcsensorコマンドを実行するラッパをpcsensor.shとして公開しています。

というわけで、SolarisでもUSB温度計を使用できるようになりました。めでたしめでたし。

2017/9/14追記

↓のPerlモジュールがSolarisでも動作しました。

Device::USB::TEMPer1F - search.cpan.org

cpanに登録されているのでcpanmでインストールできます。

$ sudo cpanm -v Device::USB::TEMPer1F
...

↓のようなサンプルスクリプトで温度を取得できました。

#!/usr/bin/perl

use strict;
use warnings;

use Device::USB::TEMPer1F;

my $temper = Device::USB::TEMPer1F->new or die $@;
print $temper->fetch, "\n";

動作はしたのですが、どうもfetchメソッドでexternalのセンサーの値を読んでいるようなので、internalのセンサーの値を読むように変更しました。これは作者にフィードバックしておこうと思います。

--- TEMPer1F.pm.orig    2017-09-14 10:21:37.907791130 +0900
+++ TEMPer1F.pm 2017-09-14 10:21:48.015163258 +0900
@@ -79,7 +79,7 @@
     ) || die "Cannot read the the temperature!\n";

     my $r = [unpack "C8", $self->{buffer}];
-    return sprintf "%0.2f", $r->[4] + $r->[5]/256;
+    return sprintf "%0.2f", $r->[2] + $r->[3]/256;
 }

 ############################ private methods ##############################
実行例
$ sudo perl temper.pl
33.69

このモジュールだと16回以上取得してもエラーにならないようです。しかし、最初にmodunloadする必要はあるようでした。上記のCプログラムも、このPerlモジュールに倣って、不要そうなini_control_transferのあたりを削除したらエラーが出なくなりました。

ずいぶんシンプルになりました。今までの苦労はいったい。でもだいぶ勉強になった気がしました。

2017/9/28追記

eBayで、センサーが2つ付いたTEMPer2と、湿度計が付いたTEMPerHUMも買って対応してみました。 なんだかTEMPer工場みたいになってしまいました。はじめは部屋の温度を記録したかっただけなのにすっかり手段と目的が入れ替わってます。 USBハブに直接挿すと熱が伝わってしまうので、100円ショップのUSB延長ケーブルを使っています。

f:id:shakemid:20170928225610j:plain

eBayで買うとだいたい10日~2週間くらいで届きました。ちょっと納期はかかりますが値段は日本のAmazonで買うより安めです。 stores.ebay.com

ソースコードGithubで公開しています。 github.com

温度と湿度の計算式はこちらをだいぶ参考にしました。 github.com

かなり車輪の再発明感はありますが、より簡単にビルドできて、Solarisでも動きます。Solarisでも動きます。(大事なことなので2回言いました)

2017/8/21 北米皆既日食を見てきました

今世紀最高の条件(観測地へのアクセスのしやすさ、晴れやすさなど)と言われた、北米皆既日食を見てきました。皆既日食帯のほぼ中心に位置するオレゴン州ライオンズ(Lyons)という小さな町で、雲一つない快晴に恵まれ、パーフェクトな条件で観測することができました。皆既日食を見るのはこれが初めてで、超感動しました。本当に行ってよかったです。

f:id:shakemid:20170824153137j:plain

皆既日食中のコロナを多段階で合成。 BORG 71FL, 7215 x1.4, SONY α7S, 560mm, f/7.9, ISO100, 1/1000+1/250+1/60+1/15+1/4s, RAW5枚合成, ステライメージ8でローテーショナルグラディエント, トーンカーブ調整, アンシャープマスク等。

f:id:shakemid:20170917193104j:plain

双眼鏡で眼視したイメージを思い出して再現してみました。プロミネンスから外部コロナまで全部見えていて、空は青く見えました。 BORG 71FL, 7215 x1.4, SONY α7S, ISO100, 1/1000+1/250+1/60+1/15+1/4+1+4s, RAW7枚合成, ステライメージ8でローテーショナルグラディエント, トーンカーブ調整, アンシャープマスク等。

f:id:shakemid:20170905102158j:plain

コロナがよく見えるように調整してみました。フルサイズの画角からはみ出るくらいコロナが広がっています。調整の仕方で印象がずいぶん異なりますね。 BORG 71FL, 7215 x1.4, SONY α7S, ISO100, 1/1000+1/250+1/60+1/15+1/4+1+4s 各2~3枚、合計RAW19枚合成, ステライメージ8でスタック、ローテーショナルグラディエント, トーンカーブ調整, アンシャープマスク等。

f:id:shakemid:20170824112115j:plain

皆既日食中のコロナ。1枚だと内部コロナが白く飛んでしまいます。 BORG 71FL, 7215 x1.4, SONY α7S, ISO100, 1/4s, RAW1枚, GIMPAPS-C相当にトリミング, トーンカーブ調整, アンシャープマスク等。

f:id:shakemid:20170824112105j:plain

ダイヤモンドリング。コロナやプロミネンスも見え始めています。 BORG 7215のおかげで、ゴーストはかなり少なめだと思います。 BORG 71FL, 7215 x1.4, SONY α7S, ISO100, 1/60s, RAW1枚, GIMPAPS-C相当にトリミング, トーンカーブ調整, アンシャープマスク等。

f:id:shakemid:20170824112128j:plain

長く露出するとコロナがフルサイズからはみ出るくらいに広がっているのが写りました。地球照に照らされた月面の模様も見えてきました。太陽がたしかに月に隠されているのがよく分かります。 BORG 71FL, 7215 x1.4, SONY α7S, ISO100, 4s, RAW1枚, GIMPトーンカーブ調整, アンシャープマスク等。

f:id:shakemid:20170901215101j:plain

ベイリービーズ。皆既の直前です。 BORG 71FL, 7215 x1.4, SONY α7S, ISO100, 1/8000s, GIMPで調整。

f:id:shakemid:20170901205845j:plain

プロミネンス。α7Sだとちょっと解像度が足りない感じですが、炎のような感じで写りました。 BORG 71FL, 7215 x1.4, SONY α7S, ISO100, 1/1000s x6枚, ステライメージ8でスタック, 調整, GIMPで微調整。

撮影機材

f:id:shakemid:20170822003700j:plain

撮影機材は機動性重視で、ミニボーグを中心に構成しました。旅の荷物の総重量は20kgほどで、追加費用なしで余裕で飛行機に乗れる重さでした。レンズをばらして機内持ち込みにできるのも組み立て式のBORGのいいところです。

  • 望遠鏡
    • TOMYTEC ミニボーグ71FL対物レンズ(BK)【2572】
    • TOMYTEC M57ヘリコイドLIII【7861】
    • TOMYTEC M57ヘリコイドDXII【7761】
    • TOMYTEC ミニボーグ鏡筒DX-LD【6015】
    • TOMYTEC M57/60延長筒S【7602】
    • TOMYTEC 1.4×テレコンバーターGR【7215】
    • TOMYTEC カメラマウントホルダーM【7000】
    • TOMYTEC M49.8延長筒S【7921】
    • TOMYTEC M49.8延長筒M【7922】
    • TOMYTEC カメラマウント ソニーNEX用(Eマウント)【5013】
    • MARUMI ステップダウンリング 72mm → 49mm(部分日食中のみ)
    • Kenko PRO ND1000+ND100 (ND100000相当) 49mm(部分日食中のみ)
  • カメラ
    • SONY α7S
    • SONY NEX-5R(予備)
    • ROWA-JAPAN タイマーレリーズ
  • 赤道儀
  • 三脚
    • SLIK AMT 340HD
    • SIRUI L-20S 雲台
    • SLIK ストーンバッグDX
  • 双眼鏡
    • TO-PLAN Solar Opera 3倍
    • Carl Zeiss Terra ED 42x8 (もちろん皆既中のみ)

71FL+レデューサー7872セット 6472

71FL+レデューサー7872セット 6472

  • メディア: エレクトロニクス

Vixen ポータブル赤道儀 星空雲台ポラリエ(WT) ホワイト 355051

Vixen ポータブル赤道儀 星空雲台ポラリエ(WT) ホワイト 355051

  • 発売日: 2011/11/30
  • メディア: エレクトロニクス

旅行記

半年前

皆既日食は一生のうちには見たいと思っていましたが、行くかどうか迷っていました。北米でアクセスしやすいとはいえ、皆既日食帯に入るのは比較的田舎の州がほとんどで、半年前の時点ですでに皆既日食帯内のホテルはほとんど満室で、公共交通機関も混雑であまり期待できない状態でした。皆既日食帯に入るには、少し離れたところに宿泊し、レンタカーで移動するのがほぼ必須という状況だったので、海外で運転したことがなく、日本でもあまり運転しない私は困ってしまいました。 そんな中、1月にアメリカ居住経験がある友人の1人がポートランド近辺で日食を見に行くというのを聞き、それが後押しになって、私も行くことを決めました。ポートランドはけん玉プレイヤーの友達も多く、いざとなったら頼れるのも理由の1つでした。 3年くらい車を運転しておらず、運転に自信がなかったので日本で何回かレンタカーを借りて練習しました。国際免許も初めて取得しました。国際免許は免許センターに行って2000円払えば誰でももらえます。

撮影機材は天体観測遠征用のものをある程度持っていたのでそれらを使うことにしました。望遠鏡は、そのときに持っていたBORG 45EDIIでも充分に撮影できますが、せっかく海外まで遠征するので新しいものがほしくなり、BORG 71FLを購入しました。

2017/8/17

羽田からロサンゼルスを経由して、ポートランドに入りました。空港近くのAlamoレンタカーでまずレンタカーを借りました。営業所は空港から少し離れていて、数分おきにシャトルバスが運行されています。営業所につくと、予約を確認し、わりとすぐに車に案内されました。日本車がいいと思って日産の車を予約していたのですが、同等の車ということで現代が出てきてちょっとがっかりしました。これはもうしょうがないです。設備をチェックすると、GPSナビを予約していたはずが付いていませんでした。スタッフに確認すると、在庫がなくて、別の営業所に取りに行かなければならないけどキャンセルするか?というようなことを聞かれました。さすがにナビは必要と思ったので待つことにしました。20分くらいして持ってきてくれたのですが、電源コードの接触が悪く、すぐに電源が切れてしまう状態だったので、交換してもらいました。しかし今度は取付の部品が合わず、車に取り付けられませんでした。もう1度交換してもらい、ようやく使えるようになりました。さすがアメリカという感じでかなり適当なので、出発前によく確認した方がよいと思いました。今回は不安だったのでGPSナビを借りましたが、今ならiPhoneアプリと車載ホルダーでも充分かもしれません。

心配だった運転はそれほどでもなく、なんとか大丈夫でした。交通ルールを事前に予習しておいたのと、日本で運転の練習をしておいたのがよかったです。日本との最大の違いは右側通行なので、常に意識しておいた方がよいです。日本と逆で右折は簡単ですが、左折はちょっと怖いです。油断すると逆車線に入りそうになるので、左折時は特に意識が必要です。左ハンドルはあまり気になりませんでしたが、ワイパーとウインカーが左右逆なのは慣れるまで数日を要しました。最初の2日くらいは10回くらいワイパーを動かしてしまいました。

abroad.driver.jp

空港から1時間弱ほど運転してホテルに到着しました。ホテルはポートランドダウンタウンから少し南に行ったところにある↓のホテルにしました。

www.booking.com

半年前の時点で空き部屋が残り少なく、ちょっといい部屋しか空いてませんでした。やたら広く、キングサイズのベッドがある部屋でした。ベッドに枕が5個置かれていて、何に使うのかよく分かりませんでした。

2017/8/18

18日は観測地の下見に行きました。皆既日食当日の朝はポートランドから南に向かう道は大渋滞することが予想されていたので、前日の内にセイラム(Salem)まで移動して車中泊し、さらに南東に向かって皆既日食帯のほぼ中心で観測する計画を立てました。 Googleマップで調べたところ、セイラムから南東に向かうと、ライオンズ(Lyons)という小さな町があり、小学校があったのでそこをめざしてみることにしました。

f:id:shakemid:20170830002407j:plain

ポートランドからセイラムまでは車で1時間弱くらいでした。セイラムはオレゴン州の州都なので、それなりに店などが多く、駐車場で車中泊ができる程度に平和なようでした。比較的アクセスしやすい場所に24時間営業のデニーズがあったので、そこを前泊場所の候補にしました。 セイラムからさらに南東に車で30分くらい走ると、ライオンズに着きました。小学校には芝生の大きなグラウンドがあり、観測に適していそうでした。今は夏休みなので児童はほとんどいませんでしたが、職員の方はいたので、話をしてみたところ、少人数だったらグラウンドで観測してもよいと快く承諾してくれました。トイレも借りることができました。 ひとまず練習で太陽を撮影してみました。

夜はオレゴン州の最高峰、フッド山(Mt. Hood)の方面に走り、天体観測してみることにしました。山に向かって走ると、トイレがある簡易休憩所のようなところがあったので、そこで夜になるのを待ちました。オレゴンは緯度が北緯45度程度と、北海道よりやや北なので今の季節は日照時間が長く、夜8時を過ぎてもまだ少し明るいくらいでした。夜9時を過ぎてくると星が見えてきて、天の川も見えました。しかしこの日は部分的に曇りですっきりと晴れませんでした。なんとか天の川は撮影できましたが、雲が晴れそうになかったので日が変わらないうちにさっさと退散しました。

2017/8/19

19日は、朝食のために朝8時くらいに起きましたが、前日の200km以上の運転と、時差ボケでそのあと午後2時くらいまで寝てしまいました。午後2時は日本時間で朝の6時なので、だいたい日本時間に近い感じで生活することになり、結果的に時差ボケはそれほどなかったような気がします。

午後からゆっくりとローズガーデンに観光に行きました。バラの花と、森の中のトレッキングを楽しむことができました。自然を楽しめるのはオレゴンのいいところです。

夜は星がきれいに見えそうな、マウントフッドビレッジというところを目指してみました。明るい内に到着したかったのですが、時間を読み間違えて夜9時過ぎに到着してしまい、車のライト以外ほとんど真っ暗な状況で、ロケハンに難航しました。携帯の電波も入ったり入らなかったりで、Googleマップも当てになりません。

www.tripadvisor.jp

たまたま広場のような場所を見つけて入ってみたところ、素晴らしい星空で、天の川がはっきりと見えました。この日は雲もほとんどなく快晴で、天体観測にはパーフェクトでした。後から調べてみるとここはゴルフ場だったようです。

満天の星空と天の川。Samyang 14mm f/2.8, SONY α7S, ISO6400, 30s, RAW1枚, iPhoneLightRoomInstagramで編集。

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上の写真を再処理しました。Samyang 14mm f/2.8, SONY α7S, ISO6400, 30s x20枚, LightRoomで現像, ステライメージ8でスタック, GIMPで微調整。

M31アンドロメダ銀河。BORG 71FL, SONY α7S, ISO6400, 60s, RAW1枚, iPhoneLightRoomInstagramで編集。

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上の写真を再処理しました。BORG 71FL, SONY α7S, ISO6400 30s x10枚, ISO12800 30s x10枚, LightRoomで現像, ステライメージ8でスタック, GIMPで微調整。

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立ち上るような天の川。地平線近くまで夕焼けのように赤く写りました。 Contax Carl Zeiss Distagon 35mm f/2.8, SONY α7S, ISO6400, 30s x10枚, LightRoomで現像, ステライメージ8でスタック, GIMPで微調整。

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夏の大三角と天の川。35mmレンズの画角は天の川の幅と合っててよいです。 Contax Carl Zeiss Distagon 35mm f/2.8, SONY α7S, ISO6400, 30s x10枚, LightRoomで現像, ステライメージ8でスタック, GIMPで微調整。

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M27亜鈴状星雲。小さめですがよい発色で写っていると思います。α7SのISO12800はちょい撮りには充分常用できるほどノイズが少ないと思います。 BORG 71FL, SONY α7S, ISO12800 30s x10枚, LightRoomで現像, ステライメージ8でスタック, GIMPで微調整。

2017/8/20

20日も昼過ぎまで寝て、午後にゆっくりマルトノマ滝を見に行きました。道路が混みすぎていて駐車場までたどり着けませんでしたが、なんとか路上駐車することができました。 マルトノマ滝は落差約180mの見事な滝でした。

夜はいよいよ皆既日食の観測地への移動です。夜の時点ではまだ道路はそれほど混んでいませんでした。無事にセイラムにあるデニーズの駐車場に停車することができました。夕食もそれほど待たずに食べることができました。しかし、あれよあれよという間に満席になり、駐車場も満車になりました。やはり、前泊しようとしている人が多かったようです。早めの行動が功を奏しました。

2017/8/21

朝5時頃にセイラムを出発し、日の出前にライオンズに到着することができました。セイラムから東の方向に行く人は少ないと読んでいたとおり、道路はそれほど混んでいませんでした。 日の出前から天気は快晴で、パーフェクトな条件での観測が期待できました。

場所を確保して機材を準備していると、徐々にグラウンドに人が集まってきました。それでも最終的にだいたい30人くらいで、のんびりと落ち着いて観測できました。

太陽が昇り始めたらさっそく望遠鏡を太陽に向け、赤道儀で追尾を開始しました。ノートラブルで好調でした。

日食が始まる直前に、↓のような感じの緊急警報が携帯に送信されてきました。地震でも起きたのかと思ってちょっと驚きましたが、太陽を直接見ないようにとの注意喚起でした。日本だと地震くらいでしか見たことがないですが、こんな使い方もあるのですね。

注意喚起をしても、日食がある度に残念ながら失明する人が出るそうです。なんせ大統領が裸眼で見てしまうくらいですからね。本当に危険なのでダメ絶対です。

www.bbc.com

午前9時過ぎから太陽が欠けはじめました。太陽が半分以上欠けてくると、気温が体感できるレベルで下がり、少し肌寒いくらいでした。また、だんだんと暗くなっているのがわかりました。夕方や、曇りのときとは明らかに違う暗さで、日食独特の雰囲気でした。

部分日食中はタイマーレリーズで自動撮影していたので、太陽双眼鏡で眺めたり、ふつうの双眼鏡で↓のような感じで投影して遊んだりしていました。

皆既の時間が近づいてくると、いよいよ気分が高まってきました。皆既日食が継続している時間はわずか2分しかありません。私は撮影が主な目的ですが、その場で撮影パラメータを考える余裕はほぼありません。あらかじめパラメータは決めておき、予定どおり行動できるようにイメージトレーニングしていました。結果として↓のような感じで行動することができ、98%くらい完璧でした。このイメージ力はけん玉スキルだと思います。

  • 第1接触(欠け始め)~皆既1分前まで
    • ISO100, シャッター速度1/200sに設定, 念のためブラケット撮影1EVx5枚に設定(1/800, 1/400, 1/200, 1/100, 1/50s で一度に撮影)
    • レリーズタイマーで2分おきに自動撮影
  • 皆既1分前~第2接触ダイヤモンドリング
    • 太陽フィルターを外す
    • シャッター速度1/1000sに設定, ブラケット撮影2EVx5枚に設定(1/8000, 1/4000, 1/1000, 1/250, 1/60s で一度に撮影)
    • レリーズで手動連写
  • 皆既中1
    • シャッター速度1/60sに設定, ブラケット撮影2EVx5枚に設定(1/1000, 1/250, 1/60, 1/15, 1/4s で一度に撮影)
    • レリーズで手動連写5回くらい
    • ここで興奮して三脚に足が当たってしまい構図がずれました。カメラの視野内になんとか収まっていたので、10秒くらいで中心に戻すことができました。視野から出ていたらアウトでした。
  • 皆既中2
    • シャッター速度1/4sに設定, ブラケット撮影2EVx5枚に設定(1/60, 1/15, 1/4, 1, 4s で一度に撮影)
    • レリーズで手動連写3回くらい
  • 皆既中3~第3接触ダイヤモンドリング
    • シャッター速度を1/60sに設定
    • カメラを動画撮影に切り替え
    • ここまでで、皆既時間は残り30秒くらいだったようです。
    • ふつうの双眼鏡で観測。広がっているコロナがくっきり見えて感動的でした。
    • 広角レンズで撮影。金星が写りました。
  • 第3接触~第4接触(日食の終わり)
    • 太陽フィルターを付ける
    • 露出1/200sに設定
    • レリーズタイマーで2分おきに自動撮影

皆既中の写真は上の方に掲載しています。

f:id:shakemid:20170824142222j:plain 皆既中の太陽と金星。冬の星座が見えるかと思いましたが、そこまでは暗くなりませんでした。

第3接触が終わると、帰っていく人がかなりいました。私は折角なので最後まで撮影してましたが、最後までグラウンドに残っていたのは私でした。撮影機材は私が一番重装備だったくらいで、重装備な人がほとんどいない穴場でとてもいい観測場所だったように思います。

帰り道は、ライオンズからセイラムまでは混雑もなくたどり着けましたが、セイラムからポートランドの間が大渋滞でした。高速も下道も大渋滞でかなり迂回しましたがそれでも渋滞していて、通常なら1時間弱くらいのところ、5~6時間かかりました。これが行きでなく帰りだったのが救いです。やはり前泊して移動したのは正解でした。

初めての皆既日食観測にも関わらず、最初から最後まで雲一つないパーフェクトな天気で、観測機材も順調で、予定していた観測がほとんどうまくでき、非常に満足度の高い旅になりました。北米行きを後押ししてくれた友人、快く送り出してくれた家族、観測場所を提供してくださった小学校の方、Facebookで地元の情報を教えてくれた友人達と、そのほかにも多くの方のおかげで素晴らしい体験をすることができました。感謝感謝です。 次は2024年にまた北米で皆既日食があるのでまた行きたいですね。日本で次に見られるのは2035年なのでまだだいぶ先ですが、今から楽しみです。

おまけ

壁紙として使えそうな感じに加工してみました。よろしければご自由にどうぞ。

http://www.shakemid.com/pub/total_solar_eclipse_wall_1920.png http://www.shakemid.com/pub/total_solar_eclipse_wall_1920.png

http://www.shakemid.com/pub/total_solar_eclipse_wall2_1920.png http://www.shakemid.com/pub/total_solar_eclipse_wall2_1920.png