中国製のけん玉を買ってみた

このところ海外のけん玉プレイヤーの間で中国製のけん玉の評判が良いようです。YouTubeなどの動画では中国製のけん玉を使っているプレイヤーがたくさんいますし、ヨーロッパのけん玉大会では中国製のけん玉も使用を認められています。

中国製のけん玉は、現在のところ日本では販売されておらず、日本けん玉協会主催の大会などで使用することもできません。しかし、品質が良ければいずれ世界で中国製の方がデファクトスタンダードになることも充分にありえます。私を含め、気になっているであろう日本のけん玉プレイヤーのためにも入手してみることにしました。

雑感

結論から先に言うと、中国製のけん玉はたしかに日本のものに匹敵するほどの品質だと思いました。外観・寸法・重量は日本のけん玉に非常に近くなっており、最も重要な技のやりやすさについても日本のものと比べて違和感がほとんどありません。全日本選手権に出場するようなトップクラスのプレイヤーでも違和感なく使えるであろうというのが第一印象です。

入手



中国製のけん玉は海外の通販サイトで買うことができます。今回はイギリスのKendama-Worldで買ってみることにしました。日本で日本のけん玉を買うより相当に割高ですが仕方がありません。

Kendama-Worldの商品紹介を見てみると、Winner II、Battle Kendama、Sun Riseあたりが日本けん玉協会公認のけん玉に近いようなので、それぞれ4本ずつ注文しました。決済はPayPalが使えたので楽でした。注文して2週間ほどで手元に届きました。

価格

Kendama-Worldでの販売価格は以下のとおりです。色によって価格が違うものは最も安いものを選んでいます。

大空(参考) Winner II Battle Sun Rise
ユーロ 22.52 17.19 14.22 16.00
日本円(1ユーロ=115円換算) \2,590(日本では\1,470くらい) \1,977 \1,655 \1,840

中国製のけん玉は日本のけん玉よりは割安ですが、大差ない価格帯で販売されているようです。

パッケージ

Winner II



Winner II は紙箱のパッケージに入っています。付属品は替糸が1本、ステッカーが2種(なぜドクロ?)、英語と簡体中国語の説明書が入っています。紙箱は横に穴を空けられるようになっていて、けん玉を2本立てられるスタンドにもなります。英語の解説はBKAのサイトから無断で引用しているらしく、BKAのVoidさんが立腹してました。このへんはさすが中国。

Battle Kendama


Battle Kendama は日本のけん玉と同じような透明な袋のパッケージに入っています。付属品が豪華で、替糸が1本、キーホルダーが2種、ステッカーが2種、簡体中国語の説明書が入っています。

Sun Rise


Sun Rise のパッケージは簡素で、替糸や説明書などは入っていません。中国製ですがパッケージは英語で書かれており、European Kendama Association という組織の公認けん玉のようなのですが、「European Kendama Association」で検索してもそれらしいサイトが見つからずよくわかりません。

寸法


夢元と寸法を比較してみました。Winner II、Battle Kendama、Sun Rise ともに日本けん玉協会公認のけん玉とほぼ同一の寸法になっています。

重量

サンプル中の玉とけんの重さの平均・最小・最大を表にまとめます。夢元のデータは過去に計測したものです。

けん 全体
Winner II(サンプル数4) 74g(72g〜76g) 68g(65g〜70g) 142g(141g〜144g)
Battle(サンプル数4) 75g(71g〜81g) 69g(64g〜76g) 144g(135g〜148g)
Sun Rise(サンプル数4) 82g(74g〜88g) 72g(68g〜77g) 154g(148g〜157g)
夢元(サンプル数10) 72g(67g〜81g) 69g(64g〜73g) 142g(135g〜152g)

Sun Rise の玉がやや重いですが、Winner II と Battle Kendama は夢元と似たような重量でした。重量のばらつきについては、夢元と同じかむしろ小さいようでした。

外観

Winner II


夢元を意識しているようで、すべり止めや中皿のふちの形状がとても似ています。大皿と小皿のふちは夢元ほど面取りされておらず、やや角張っています。けん先は夢元よりやや太くなっています。
けんの糸穴はけん先から1mmくらいのところに開けられており、これも夢元を意識しているようです。糸穴の位置は小皿側にずれておらず、皿胴の中央になっています。
けん軸に糸の取り付け穴が開けられており、糸の固定方法は日本のけん玉と同じです。この糸穴の開け方は日本けん玉協会の特許だったと思いましたが、そんなことはお構いなしですか。
仕上げは今回購入した3種類の中で最も美しく、夢元にはやや及びませんが大空と同等と言ってよいレベルです。

Battle Kendama


Battle Kendama も夢元と似ていますが、すべり止めが面取りされて丸みを帯びています。大皿と小皿のふちも Winner II よりやや丸みを帯びています。
けんの糸穴はけん先から2mmくらいのところに開けられており、位置は皿胴の中央です。
玉の塗装がやや粗く、塗料が盛り上がっているところがあります。玉の穴の仕上げもやや雑に見えますが、使っているうちにどのみち傷んでくるので気にならなくなるでしょう。
仕上げは大空と大差ないレベルになっていると思います。

Sun Rise


Kendama-World の商品説明によると、Sun Rise は TK16 Master を真似て作られたようです。Winner II や Battle Kendama と比べて、やや皿のふちやすべり止めが角張っています。
けんの糸穴はけん先から2mmくらいのところに開けられており、位置は皿胴の中央です。
けん軸を通す皿胴の穴の仕上げがやや粗く、4本中1本は隙間が空いてきちんと固定できませんでした。
技を行うには問題のないレベルに仕上がっていると思います。

技のやりやすさ

灯台、月面着陸など

皿と玉の密着性は、Winner II、Battle Kendama、Sun Rise ともに新品の夢元には及びませんが、大会で使用するのにも問題ないレベルです。Winner II と Battle Kendama は大空と同じかやや下回る程度で、Sun Rise はやや玉と皿の隙間が大きく、すべりやすい印象を受けました。
中国製のけん玉は、使い込むことによってより灯台や月面着陸が止まりやすくなるという意見もありますので、使い込むことによって感想が変わるかもしれません。

一回転飛行機など

いずれのけん玉でも回転の安定度は問題なく、大差はありません。

うぐいす、すべり止め極意、中皿極意、大皿極意など

いずれのけん玉でも問題なく静止でき、大差はありません。

けん先すべり

いずれのけん玉でも問題なくすべらせることができ、大差はありません。


(2011/3/21) 定量評価を追記しました。
http://d.hatena.ne.jp/shakemid/20110321

耐久性

今回耐久性についての検証は行えていません。塗装のはがれや、けんの欠けなどは使い込まないとわかりませんので、今後の機会にレポートできればと思います。また、使い込むことによって特定の技がやりやすくなることも考えられますので、こちらも要件証です。

総括

中国製のけん玉をレビューしてみました。繰り返しになりますが、中国製のけん玉は日本けん玉協会公認のけん玉に匹敵する品質になっており、大会などでの使用にも充分堪えるという感想を持ちました。いちおう、けん玉道六段、公認1級指導員、現役全日本選手の意見ですのでそれなりに信憑性はあると思っています。
特許や著作権の問題はクリアになっていませんが、安価で品質の高いけん玉はすでに作られています。品質だけを見ると、日本の大会で中国製のけん玉を使ってはいけない合理的な理由はもはや見当たりません。けん玉のグローバル化にあたって、道具の問題はおそらく出てきますので、よい方向に進むことを願ってやみません。