現行の自宅サーバ
2008年に組んだ自宅サーバがだいぶ古くなってきたのでリプレースを思い立ちました。現状の構成は以下のような感じです。
ケース | Dirac Noah-800 |
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電源 | 80W ACアダプタ |
MB | Intel D945GCLF2 |
CPU | Intel Atom 330 (On Board) |
Memory | DDR2 DIMM 2GB |
Video | Intel 945GC (On Board) |
HDD | Hitachi 2.5inch SATA 250GB x2 |
OS | Solaris 11 Express |
この構成で、アイドル時の消費電力は34W程度と、当時としてはそれなりに省電力でしたが、今となっては大して省電力でもありません。IvyBridgeが出てきた今なら、Xeonでこの消費電力を下回れそうな気がしたので、AtomをXeonでリプレースしてみることにしました。
CPU選定
CPUは、TDP17Wと、Xeonとは思えない恐るべき低消費電力の Xeon E3-1220L v2 を選びました。TDPの低さは、IvyBridgeのCPUの中でも群を抜いています。ただし、このCPUはグラフィック機能(IGP)を内蔵していないので、別途グラフィックボードを用意する必要があります。
グラフィックボードはアイドル時6Wと低消費電力な Radeon HD5450 の適当なものにしました。マザーボードが PCI Express x4 にしか対応してないですが、 PCI Express x16 の製品しかないので、こんな感じのx4→x16変換コネクタを使って無理矢理接続しました。
グラフィックが必要なら、IGP対応でTDP35Wの Core i5-3470T、もしくはTDP45Wの Xeon E3-1265L v2 とかでいいんじゃないかという気もしますが、1220L v2を使いたいだけなのでこれでよいということにしておきます。さっそく完全に手段と目的が入れ替わってます。
マザーボード選定
マザーボードは、Intel DQ77KB (http://www.intel.com/content/www/us/en/motherboards/desktop-motherboards/desktop-board-dq77kb.html)を選びました。Xeon E3を正式サポートしているだけでなく、面白い特徴がいくつかあります。
Thin Mini-ITX対応
Thin Mini-ITXはIntelが提唱する新しいフォームファクタです。縦横はMini-ITXと同じですが、高さがMini-ITXの半分ほどになっています。対応するケースはまだほとんどないようですが、Mini-ITXよりさらにコンパクトにできるので、今後普及していくかもしれません。
縦横のサイズは同じなので、Mini-ITX用のケースにも問題なく取り付けることができます。背面のブラケットは、Thin Mini-ITXサイズのものと、Mini-ITXサイズのものが両方付属しています。
メモリは、204pinのDDR3 SO-DIMMを2枚搭載できます。Intelのサイトには、「240pin DDR3 SDRAM」と書いてありますが、明らかに間違いですのでご注意ください。公式でこういう誤植は罠になるので気をつけてほしいものです。
ACアダプタ給電
Mini-ITX対応のケースには、DC-DC基板を内蔵してACアダプタで給電できるものが多いですが、このマザーボードはACアダプタを直接接続して給電することができます。Mini-ITXケースはただでさえ狭いのに、24ピンのぶっとい電源ケーブルが邪魔になりがちですが、24ピンケーブルは不要なのでケースの中がすっきりします。なお、SATAドライブ用の電源はマザーボード上のコネクタから給電できます。SATA電源の4分岐ケーブルも付属しています。
ACアダプタは付属していないので別途調達する必要があります。電圧19Vで、コネクタが外径7.4mm・内径5.0-5.1mmのACアダプタが使用できます。HPかDellのノートPCが同型のACアダプタを使っているので、HPかDell対応のものを探すとよいと思います。私はDell純正の150WのACアダプタを購入しました。
ノートPC用のACアダプタは3000円くらいで入手できるので、PicoPSUなどのDC-DC基板よりだいぶ割安です。
Intel AMT(vPro)対応
Intel AMTは、PCを遠隔操作できる機能です。サーバ機には普通に搭載されているIPMIなどと同じような機能です。企業等でシステム管理者がPCを遠隔で操作・管理することを想定されている機能ですが、自宅サーバの管理にも適していると思います。
古いバージョンではBIOS画面から設定できたようですが、今のバージョンではBIOS画面からは設定できなくなったようです。AMTのおおまかな設定方法は以下になります。
- 電源投入時に Ctrl+P を押す。
- 初期パスワード(admin)を入力して、設定画面に入る。
- パスワードを設定する。(8文字ちょうどで、大文字・小文字・数字・記号を全て含む必要があります)
- IPアドレスなどを設定する。
遠隔のWindows PCから、Manageability Developer Tool Kitに含まれる、Manageability Commander Toolで以下のような操作を行うことができます。
・電源のON/OFF
リモートから電源を操作できます。たとえばOSがフリーズして操作できないような場合でも、遠隔で再起動することができます。再起動するために、サーバのある場所まで行かなければいけないのとは安心感が違います。
・リモート操作
仮想的なシリアルコンソールからBIOSの設定が行えます。シリアルコンソールに対応しているOSならOSの操作もできます。また、IGP対応のCPUを搭載していれば、VNCでOSを操作することもできます。
余談ですが、このマザーボードはグラフィックなしでも起動できます(Windows7で確認)。BIOSで、「Configuration -> Video -> No Video Detected Error Beeps」の設定を「Disabled」にすればよいようです。UEFIブートに難儀して他のOSでは試せていませんが、シリアルコンソールに対応したOSをインストールして、KVMなし(Headless)で運用するのもありかもしれません。ESXi 5.0では起動できなかったとの報告がありましたが、5.1u1では起動できたとの報告がありました。
・ドライブのリダイレクト
リモートから仮想ドライブをマウントすることができます。物理的なドライブだけでなく、ISOイメージもマウントできるので、OSのインストールなどがとても楽です。もう光学ドライブを使うことはほとんどなくなりました。
そのほかのスペック
そのほかのスペックは以下のような感じです。24時間稼働させるのにメインPCと同等かそれ以上のスペックになってしまいました。8万円くらい使ってしまってまったくコストパフォーマンスがよくありませんがボーナスも出たことなので自分へのご褒美ということにしておきます。
ケース | InWin WAVY II (電源は外しました) |
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電源 | Dell PA-15 150W ACアダプタ |
MB | Intel DQ77KB |
CPU | Intel Xeon E3-1220L v2 |
Memory | SanMax DDR3 SO-DIMM 4GB x2 |
Video | SAPPHIRE HD5450 512M (こんな感じの変換コネクタで接続) |
HDD | Hitachi 2.5inch SATA 1TB x2 (こんな感じのマウンタで固定) |
OS | 選定中 |
Windows 7 のエクスペリエンスインデックスは以下のようになりました。グラフィックが適当なので低いですが、CPUとメモリはさすがXeonです。
消費電力計測
Windows 7 をインストールして、アイドル時と高負荷時(prime95実行)のCPUとシステム全体の消費電力を計測してみました。また、グラフィックボードなしでも起動できたので、グラフィックボードなしのときも計測してみました。
CPUの消費電力はCPUID HWMonitorで確認しました。システム全体の消費電力はワットチェッカーで計測しました。
グラフィックあり
アイドル時CPUの消費電力2.6Wと、Xeonとは思えない消費電力の低さをたたき出してくれました。システム全体でも25Wと、Atomマシンを完全に下回っています。
prime95実行時のCPUの消費電力は、一瞬18.5W程度になったあと16.5W程度になり、TDP17Wに違わない結果となりました。システム全体でも49Wなので、90WくらいのACアダプタでも充分だったかもしれません。
状態 | CPU | システム全体 |
---|---|---|
アイドル | 2.6W | 25W |
prime95 | 16.5W | 49W |
画面上で Core i5-3570T と表示されていますが、Xeon E3-1220L v2 に対応していないようです。
やりたいこと
Xeonを1つのOSで占有しても完全にオーバースペックなので、ハイパーバイザで仮想化して、Solaris 11 と Windows 2008 Server を動かしたいと考えています。
Hyper-V
Microsoftのハイパーバイザです。ゲストOSとしてWindowsを動かすなら悪くない選択肢です。Windowsが動くハードウェアならだいたい動くのでインストールはしやすいです。
次期バージョンではRemoteFXが標準でサポートされるので、家庭内シンクライアントで動画再生とかもできるかもしれません。RemoteFXはIGPだと動作しないので、わざわざグラフィックカードを別途搭載する意味もありそうです。
Hyper-V上にSolaris 11のインストールはできるのですが、IDEドライバが古く127GBまでしか認識しませんでした。パススルーディスクを使ってもだめです。Solaris側のIDEドライバがBigDriveに対応してないようなのでお手上げです。統合サービスがないのでSCSI接続もだめです。MicrosoftがSolaris用の統合サービスを作るとは思えないのであきらめるしかなさそうです。
VMware ESXi
ハイパーバイザのデファクトスタンダード的存在ですが、ハードウェアの要件がたいへん厳しいです。特に、NICとディスクコントローラでつまずくことが多いようです。
まず5.0を試してみましたが、 Initializing ACPI というメッセージが表示されたところでフリーズして、インストーラすら起動しません。
4.1は、noACPI オプションを付ければ起動はしました。ネットワークもIntel NICなので問題なくつながります。しかし、simple.map, pci.ids を編集してもSATAコントローラを認識すらしません。
↓のサイトでも同様の事象が報告されています。対応を待つしかないのかも。
http://communities.vmware.com/message/2050078
(2012/8/13 追記)
BIOSのバージョンを0042(2012/7/26版)にアップデートして、UEFIブートでESXi5.0をインストールできました。BIOSの不具合っぽいですね。
XenServer
XenServerなどXen系のハイパーバイザはまだ試してませんが、Linuxベースなのでまともに動作する可能性はいちばん高そうです。ぼちぼち試してみることにします。
(2012/9/10 続き) http://d.hatena.ne.jp/shakemid/20120910