野辺山で星を見てきました

令和最初の天体観測ということで、GWの後半は3泊4日で野辺山高原に出かけてきました。 野辺山は首都圏からアクセスしやすい天体観測スポットで、私が住んでいる千葉県浦安市からだと車で3~4時間ほどで行くことができます。 www.kanko-nobeyama.jp

野辺山には2014年にも来たことがあるのですが、そのときは1泊だけで、残念ながら夜は曇ってしまい星を見ることができませんでした。約4年半ぶりのリベンジです。

撮影場所は、野辺山駅から車で5分くらいのところにある、八ヶ岳ふれあい公園にしました。24時間無料で使える駐車場とトイレがあり、天体観測スポットとして人気があるようです。深夜でも常に星を見に来ている人がいました。

公園には1周500mの大きな池があります。水面を使った星景写真を撮るのも面白いと思います。

妙に整った形の池だと思ったら、もともとはスケートリンクだったとのことです。

こんな感じの清掃の行き届いたトイレが24時間使えます。管理人さんが常駐しているようです。

今回の装備です。1日目は、 BORG 71FL+α7S+EQ5GOTO で、主に系外銀河を狙いました。BORG 71FLは400mmしかないので系外銀河を撮影するにはちょっと小さいです。系外銀河をちゃんと撮影しようとするとさらに上の機材が必要ですが、比較的コンパクトな機材で10分くらいで気軽に撮影してきたことに価値があると思います。

2日目は池のほとりで一晩中天の川を見ていました。この日は一晩中快晴でした。夏の天の川を見るなら梅雨の前の4月~5月の夜2時~3時頃がおすすめです。池の水面を入れて、星景っぽく天の川を撮影してみました。野辺山は天頂近くは暗いのですが、低空は残念ながら光害がかなりあります。冬場はスキー場の照明でさらに光害がひどいようです。せっかくの星空なのに、残念なところです。

一晩中外にいたらカメラバッグに霜が降りてました。ホームセンターで買った防寒作業着が優秀でした。標高1300mの山と同じようなもんですから、防寒着がなかったら凍死しますね。山での天体観測は凍死との戦いです。

3日目は、北天にカメラを向けてタイムラプス撮影してみました。水面にも星が写っていい絵になるかなと思ったのですが、野辺山上空は飛行機が多すぎでした。人工衛星や流星ぽいものも写ってますね。これはこれでおもしろいです。

3泊中3晩とも晴れて、天体観測を楽しむことができました。3日目は体力が続かず、ほどほどにしてホテルに帰りました。

野辺山高原は首都圏からアクセスしやすい天体観測スポットとしては屈指ではありますが、思ったより低空の光害が目立つと思いました。特に南側が明るいので、天の川の撮影にはあまり向いてないように思いました。空の暗さでは栃木県の戦場ヶ原のほうが暗かったと思います。

shakemid.hatenablog.com

戦場ヶ原も南側はそれなりに光害があるので、関東周辺で天の川を撮影するなら千葉の南房総がよいように思います。ただし、南房総も、北側は東京の光害があります。関東周辺で光害がないところはないので、撮影したい対象に応じて撮影場所を選ぶ必要があると思います。

Kenko スカイメモS に Vixen ポーラメーターを取り付ける

Kenko スカイメモSにVixen ポーラメーターを取り付けてみたメモです。

Kenko ポータブル赤道儀 スカイメモS シルバー 455166

Kenko ポータブル赤道儀 スカイメモS シルバー 455166

Vixen ポータブル赤道儀 星空雲台ポラリエ(WT) ホワイト 355051

Vixen ポータブル赤道儀 星空雲台ポラリエ(WT) ホワイト 355051

4年ほど遠征用の赤道儀としてVixen ポラリエを使ってきましたが、Kenko スカイメモSがどうしても気になってしまったので購入してしまいました。スカイメモSはポラリエと同価格帯のポータブル赤道儀ですが、後発だけあってポラリエより優れている点がいくつかあります。ポラリエもオプションで機能拡張できるのですが、本体に対してかなり高価な感じがするのでスカイメモSはお買い得かなと思います。

ポラリエ スカイメモS
実売価格 37000円前後 35000円前後
耐荷重 2kg(オプション追加で6.5kg) 5kg
極軸望遠鏡 オプション(約30000円) 付属
電源 単3乾電池2本で2時間 単3乾電池4本で72時間

ポラリエにあってスカイメモSにないのは方位磁石くらいかなと思います。ポラリエにはポーラメーターというオプションがあり、北極星が見えなくてもある程度の精度で設置することができます。

スカイメモSにこんな感じで取り付けられたらいいなあと思いました。ポーラメーターはカメラのアクセサリーシューに取り付けられるようになっているので、スカイメモSにアクセサリーシューを取り付けてみることにしました。 f:id:shakemid:20180502122017j:plain

材料はこんな感じです。 f:id:shakemid:20180502122248j:plain

エツミのE-6617は1/4インチネジ(カメラネジ)でアクセサリーシューを取り付けることができます。私が持っていたのはE-6117という旧製品で、ネジ穴が貫通しているところが違うようです。

ETSUMI アクセサリーシューII E-6617

ETSUMI アクセサリーシューII E-6617

インチネジはホームセンターではなかなか売ってないのでモノタロウで購入しました。長さは3/8インチのものにしました。 www.monotaro.com

ピンバイスで電池ボックスのふたに穴を開けます。 f:id:shakemid:20180502122734j:plain

開けました。 f:id:shakemid:20180502123054j:plain

さらに、リーマーで穴を拡げます。だいたい直径7〜8mmくらいが良いと思います。拡げすぎには要注意です。 f:id:shakemid:20180502123127j:plain

拡げました。きれいに仕上げたい方はヤスリがけしてください。 f:id:shakemid:20180502123914j:plain

アクセサリーシューをネジ止めします。かなりがっちり止まります。 f:id:shakemid:20180502124118j:plain

裏側はこんな感じです。 f:id:shakemid:20180502124125j:plain

ネジの頭が少々浮いていますが、このくらいなら電池に干渉しませんでした。電池とふたの間の余裕があまりないので、見極めながら穴を拡げてください。 f:id:shakemid:20180502125753j:plain

電池ボックスにふたをするとこんな感じです。 f:id:shakemid:20180502124152j:plain

ポーラメーターを取り付けるとこんな感じです。うーん、まるで純正品のような自然さ。 f:id:shakemid:20180502124219j:plain

というわけで、スカイメモSにポーラメーターを取り付けてみました。これで、たとえば日食のときなど北極星が見えなくてもある程度極軸を合わせることができます。

余談ですが、スカイメモSは日本ではKenkoがスカイメモSという商品名で販売していますが、元はSky-WatcherのStar Adventurerという製品です。本体の販売価格は、日本と海外であまり変わらないですが、微動台座などのオプションは海外の方がだいぶ安いようです。少しの価格差なら日本の代理店経由で買う方が安心感があるかもしれませんが、さすがに倍とかになると、送料を考慮しても海外サイトで購入した方がお得な気がします。

Star Adventurer – Sky-Watcher USA

Star Adventurer Accessories – Sky-Watcher USA

テカポ湖で星を見てきました

ニュージーランド・テカポ湖に星を見に行ってきました。テカポは世界一星空が美しいと言われているので、天体観測が趣味の私はいつか行きたいと思っていました。 テカポのベストシーズンは4月〜8月と言われていて、訳あって4月に時間ができたので、新月のタイミングを狙って行ってみることにしました。4/16が新月だったので、その日を挟んで4/14-18の4泊5日間滞在しました。

retrip.jp

日本からのアクセスは、まず北島のオークランドに飛んで、そこからクライストチャーチクイーンズタウンを目指すのが一般的なようです。だいたい合計12時間くらいのフライトになります。 空港からテカポまでは、バスかレンタカーでの移動がよいようです。クライストチャーチからは1日に1回バスが出ているようなのですが、飛行機のタイミングとうまく合わず、余計に一泊する必要がありそうだったので、私はクライストチャーチでレンタカーを借りることにしました。 海外での運転は、去年の北米皆既日食のときにアメリカで経験していました。そのときに取得した国際免許がまだ有効でした。ニュージーランドは日本と交通ルールが似ていて、左側通行・右ハンドルで、速度はkm表記なのでアメリカよりだいぶ日本人向けだと思います。また、レンタカーの料金は保険込みで1日5000円くらいで、アメリカで借りたときの半額くらいでした。車があると現地での移動や機材の運搬も楽なので、レンタカーはおすすめかなと思います。

ニュージーランドの歩き方 - ニュージーランドの交通ルール

クライストチャーチからテカポまでは、だいたい3時間くらいかかります。飛行機に12時間くらい乗った後、3時間くらい運転するのはきつかったですが、交通ルールをあまり気にしなくていいのでアメリカでの運転より楽だった気がします。テカポへの道中では、サービスエリアのようなものはなく、景色の99%が草原でたまに羊がいっぱいいるような感じだったので、だいぶ眠くなりました。さすが人間より羊の方が多いニュージーランドです。途中にアシュバートンという大きめの町があるので、そこで休憩しました。途中での給油は必要ありませんでしたが、ガソリンスタンドは何十kmもないので、半分を切ったら給油するくらいでちょうどいいと思います。

f:id:shakemid:20180422153345j:plain

経路はほぼ1号線と8号線だけなので難しくないと思います。ナビはGoogle Mapのアプリで充分だと思います。途中79号線を通るほうが少し早いようなのですが、山越えで50kmくらい何もなくてしんどかったので、次に行くことがあったら上のような経路で行くと思います。

www.booking.com

テカポでの宿はAirbnbバックパッカー向けのホステルを予約しました。ホテルもありますが、1泊2万円以上してちょっと高めなところが多いようです。夜は星ばかり見ているのと、近くにスーパーやレストランがあって食事に困ることもなさそうだったので、私は安めのホステルでちょうどよかったかなと思います。3人部屋しか空いていなかったので、1人で3人部屋を占有してましたすみません :-p

f:id:shakemid:20180418055645j:plain

ホステルの庭からでも余裕で天の川が見えるすばらしいところでした。天気を見ながらちょっと庭に出て撮影できるのは楽でした。

テカポ湖に来たら、まず多くの人は湖畔にある善き羊飼いの教会を目指すと思います。

f:id:shakemid:20180417133156j:plain

私は初日に到着したのは日没直後くらいでした。宿にとりあえずチェックインした後、善き羊飼いの教会の近くに行ってみました。夜7時台から真っ暗で、空には見たことないくらい濃い天の川と南天の星空が見えて感動しました。

善き羊飼いの教会の周辺で、天の川は十分に見えます。しかし、有名観光地なのでヘッドライトを点けた車が深夜でもひっきりなしに出入りするので、写真撮影にはまったく向いていません。ヘッドライトが被ってひどいことになります。被ってもここまで天の川が写っているのはすごいのですが。

たぶんみなさん南半球に来たからには南天の空を撮影したいであろうと思うので、写真撮影するなら、テカポの村を少し南に抜けたあたりがおすすめです(地図上の赤いポインタのあたり)。このあたりは南側にまったく明かりがなく、南天の撮影には絶好の条件でした。

f:id:shakemid:20180421222428j:plain

昼間は特にやることを決めていなかったので、テカポ湖の西のマウントジョンにある天文台に行ってみました。テカポ湖から車で15分くらいで頂上まで行けます。通行に8NZDかかります。歩いて登るのは無料です。夜は道路が閉鎖されて、有料のツアーの申込者だけが入れるようになるようです。団体行動が苦手なので私は行きませんでしたが、地上よりも星空がさらによく見えて、天文台から望遠鏡で星を見たりできるようなので、行ってみる価値はあると思います。ツアーは150NZDほどかかります。テカポ村のスーパー(4 SQUARE)の横に受付があります。

f:id:shakemid:20180417091223j:plain

頂上からは、エメラルドグリーンのテカポ湖が見えて、すばらしい眺めでした。昼間に行くのもおすすめです。

ニュージーランドの4月は秋です。昼は15度くらいまで上がるので、日本の4月とそんなに変わらないかなと思いますが、昼夜の気温差はわりと大きく、夜は氷点下まで下がりました。真冬用の防寒着を持って行ったのでちょうどよかったです。6月〜8月は真冬になってしまうので、日本からニュージーランドに行くなら気温差が比較的小さい4月はベストかもしれません。

テカポに4泊滞在して、4晩とも天の川が見える天気に恵まれました。ニュージーランドの天気は「1日で全ての季節がやってくる」と例えられることもあるほどに、非常に変わりやすいです。4日中2日は夜に雨が降りましたが、待っていると快晴になりました。私はweather.com(iPhoneの天気予報)で1時間単位の天気予報をチェックして行動していました。weather.comの予報は1時間単位でかなり的確に当たっていたように思います。最近の天気予報はよく当たります。なので、雨が降っていても諦めないで、晴れそうな時間まで寝て待っていました。

今回の機材は以下のような感じです。北米皆既日食のときとだいたい同じで、BORG 71FL、α7S、ポラリエの軽量トリオを持って行きました。ポラリエは南半球にも対応しています。

f:id:shakemid:20180416210043j:plain

  • 望遠鏡
    • BORG 71FL
    • BORG 7872 x0.72レデューサ
    • BORG 6015 ミニボーグDX-LD鏡筒
    • BORG 7761 M57ヘリコイドDXII
    • BORG 7000+5005+八仙堂 EOS EF → SONY E マウントアダプター(この組み合わせはフルサイズでも四隅がケラレません。また、5005に48mmフィルターを取り付けることができます。)
    • BORG 0037 ファインダー
  • カメラ
    • SONY α7S
    • ロワジャパン タイマー機能付きリモートレリーズ
  • 三脚・赤道儀
    • Vixen 星空雲台ポラリエ
    • BORG 3101 片持ちフォーク式赤道儀
    • SIRUI トラベラー三脚 T-2005X
    • SIRUI 2ウェイ雲台 L-20S

赤道儀を使うときはまず極軸を合わせないといけません。北半球では北極星というわかりやすい目印がありますが、南半球の場合は「南極星」のようなものはありません。代わりに、はちぶんぎ座という星座の中にある5〜6等星の暗い星で構成される台形の形を目安にするのですが、知識としては知っていましたが実際に南天の星空を見てもさっぱりわかりませんでした。3日目まではポラリエのポーラメータで大雑把に合わせていました。30秒くらいしか露出しないのでそれでも十分なのですが、ちょっと悔しいので勉強して、最終日にようやく台形を見つけられるようになりました。台形は、8倍の双眼鏡で視野いっぱいによく見えました。探し方はいくつかありますが、小マゼラン雲から辿るのがいちばんわかりやすいと思いました。こちらのサイトを参考にしました。 ryutao.main.jp

今回、初のニュージーランド・初の南半球で、テカポの世界一の星空を見ることができて感動しました。この先どんな星空を見ても満足できない贅沢な体になってしまった気もしますが、最高の星空を見ることができてよかったです。またいつか来てみたいです。

71FL+レデューサー7872セット 6472

71FL+レデューサー7872セット 6472

  • メディア: エレクトロニクス

皆既月食 2018/1/31

2018/1/31は久しぶりの皆既月食でした。前回は2015/4/4でしたがこれは曇って見えなかったので、2014/10/8以来約3年3ヶ月ぶりでした。日食と比べて月食は見る機会が多いですが、それでも条件よく見られるのはせいぜい2,3年に1度なので貴重な機会です。 今回は天気が全国的に微妙で半分諦めていましたが、関東地方は皆既月食の前後だけ晴れるという奇跡のような天気に恵まれ、堪能することができました。写真もきれいに撮れて非常に満足しました。

f:id:shakemid:20180131205849j:plain 地球の影がわかるように写真を合成してみました。地球の直径は月のだいたい4倍ということがわかります。

3日前の時点で天気予報は曇時々晴で、きれいに見えるのはかなり厳しいかなと思っていました。

しかし、当日になると1時間予報で皆既月食がピークになる22時~23時は晴の予報になっていました。結果的にまさにこの通りになったので、weather.com(iPhoneの天気予報)恐るべし。最近の天気予報はほんとよく当たりますね。

月の出の時点ではまだ薄雲がかかっていて月はぼんやりとしか見えませんでした。

でも予報どおり徐々に雲が薄くなってきたので諦めず最強装備で出撃です。いつもの自宅マンションの通路から狙いました。

装備は以下のような感じで、月を撮影するにはかなりのハイスペックです。

  • 鏡筒: Celestron Edge HD800 2032mm, f/10
  • 赤道儀: Sky-Watcher EQ5GOTO
  • カメラ: SONY α7S

19:25ごろです。月が高くなってくると、かなり雲が薄くなり、満月がはっきり見えるようになりました。

Celestron Edge HD800, SONY α7S, 2032mm, f/10, ISO100, 1/160s

20:47ごろです。月が欠け始めました。この頃には雲はほぼ晴れていました。

Celestron Edge HD800, SONY α7S, 2032mm, f/10, ISO100, 1/200s

21:18ごろです。半分ほど欠けました。

Celestron Edge HD800, SONY α7S, 2032mm, f/10, ISO200, 1/160s

21:39ごろです。月の欠け際に見える青い帯をターコイズフリンジと言います。地球のオゾン層を通った光でこのように見えるそうです。

Celestron Edge HD800, SONY α7S, 2032mm, f/10, ISO800, 4s, ステライメージ8でトーンカーブ調整等。

22:03ごろです。皆既月食になりました。α7Sの絵画調HDRモードで撮影したらとても階調豊かに写りました。

Celestron Edge HD800, SONY α7S, 2032mm, f/10, ISO800, 2s, 絵画調HDRモードLowで撮影

22:29ごろです。食の最大です。この頃には天気は快晴になっていました。完璧な皆既月食を堪能することができました。

Celestron Edge HD800, SONY α7S, 2032mm, f/10, ISO800, 4s

これもα7Sの絵画調HDRモードで撮影しました。暗い部分は赤黒く、明るい部分は青っぽく、階調豊かに写りました。α7Sは皆既月食の撮影に相当適性があるように思います。

Celestron Edge HD800, SONY α7S, 2032mm, f/10, ISO800, 2s, 絵画調HDRモードLowで撮影, ステライメージ8でトーンカーブ調整等。

23:13ごろです。皆既後のターコイズフリンジがよく写ってます。

サブカメラのNEX-5Rで、広角レンズで2分おきくらいにタイムラプスっぽく撮影してみました。最後は少し曇りましたが、ほぼ全行程きれいに見えました。

SIGMA 19mm F2.8 DN Art, SONY NEX-5R, Siriuscompで合成

皆既月食の後に光輪が現れました。換算28mmで画面いっぱいなのでかなり大きいです。月暈(つきがさ・げつうん)と言うそうで、満月と薄雲の条件が揃ったときに現れるそこそこレアな事象のようです。この日は何かと奇跡的でした。

SIGMA 19mm F2.8 DN Art, SONY NEX-5R, 19mm, f/2.8, ISO1600, 1s, GIMPトーンカーブ調整等。

2011年のときと2014年のときとの比較です。2011年はカシオのコンデジ(EX-FH20)でふつうのカメラ三脚で撮影しました。当時はこれでも感動したものです。2014年は装備の本気度が上がって、Vixen A80MとSONY NEX-5Rで撮影しました。まだ赤道儀を持ってなかったのでポルタII経緯台で追尾しながら撮影するのはなかなか大変でした。 今回の装備は月を撮影するにはちょっと過剰すぎるくらいなのでとても快適に撮影できました。天体写真という奴は、投資額が結果に如実に表れやすいです。故に沼にハマりやすいとも言えます。私はかなり沼にどっぷりです。

というわけで、条件の良い皆既月食を存分に堪能できて非常に満足できました。次の皆既月食は2018/7/28ですが、これは日本では夜明け前で月入帯食となり、あまり条件が良くありません。今回ほど条件の良い皆既月食は2022/11/8まで待たないといけないようです。

戦場ヶ原で星を見てきました

9月の3連休は、台風18号の列島縦断で大荒れでしたが、転んでもただでは起きない精神で、台風一過の晴れ間を逃さず9/18の夜に天体観測しに行くことにしました。月齢的にも9/20が新月なのでちょうどいい時期です。 場所は、栃木県奥日光の戦場ヶ原にしました。戦場ヶ原は関東屈指の星空スポットとして有名なのでそのうち行きたいと思っていました。

www.tochigiji.or.jp

戦場ヶ原へは浦安から車でちょうど3時間くらいかかりました。公共交通機関もあるにはありますが、機材の運搬もあり、車内で仮眠することも考えると車の方が便利かなと思います。

天体観測スポットとして有名な、戦場ヶ原の三本松駐車場に着くと、すでに天体観測目当ての方々がたくさんいて、口径40cmくらいの巨大なSky-Watcherのドブソニアンや、タカハシの赤道儀と鏡筒など気合いの入った機材を展開している方もいました。私も赤道儀を持ってきたのでそれなりに重装備ですが、世の中上には上がいるものです。

f:id:shakemid:20170918173335j:plain

三本松駐車場では三本松茶屋がほぼ唯一の補給スポットになります。夜は18:30ラストオーダーで、19:00閉店と早めなので、明るいうちに到着して夕食を取り、機材を準備するのがよいと思います。トイレは24時間利用可能で、自動販売機もあるので、天体観測スポットとしてはかなり充実していると思います。

sanbonmatsu.moon.bindcloud.jp

天気は予報どおり快晴でした。台風は困りものですが、台風一過の晴れ間は見逃せません。写真左下の山は男体山です。戦場ヶ原はこの男体山の噴火でできたそうです。

標高1400mなので気温はかなり低いです。概ね東京より10度~20度くらい低いようです。その日は東京では30度を超える真夏日でしたが、戦場ヶ原では最高気温20度くらいで、最低気温は10度以下まで下がりました。真冬用の防寒着を持っていってちょうどよかったです。まだ真夏日の初秋でこれなので、冬だと雪山用の装備とかが必要だと思います。

日が沈むとすぐに辺りは暗くなり、19時台には肉眼で天の川が見えました。さすが評判どおりの暗さです。ただし、三本松駐車場は有名スポットだけあって、暗くなってからもヘッドライトを点けた車がひっきりなしに出入りしていました。望遠鏡を空に向けているぶんには大きな影響はありませんが、広角レンズで星景写真とかを撮るには駐車場から離れる必要がありそうです。

f:id:shakemid:20170921200500j:plain

戦場ヶ原の天の川。夜7時台から天の川が肉眼で見える暗さでした。 Samyang 14mm f/2.8, SONY α7S, ISO6400, 30s x16, 総露出時間 8分, ステライメージ8でスタック・トーンカーブ調整等, GIMPで微調整。

f:id:shakemid:20170921203622j:plain

夏の大三角と天の川。拡大すると迫力あります。 SONY SEL28F20, SONY α7S, 28mm, f/2.0, ISO6400, 30s x10, 総露出時間 5分, Sky-Watcher EQ5GOTOで追尾, ステライメージ8でスタック・トーンカーブ調整等, GIMPで微調整。

f:id:shakemid:20170921230734j:plain

NGC7000 The North America Nebula. はくちょう座のデネブの近くにある北アメリカ星雲。たしかにこれは北アメリカ。思っていたより大きく、フルサイズの画角でいっぱいに写りました。 BORG 71FL, 7108フラットナー, SONY α7S, 432mm, f/6.1, ISO12800 30s x10, 総露出時間 5分, Sky-Watcher EQ5GOTOで追尾, ステライメージ8でスタック・トーンカーブ調整等, GIMPで微調整。

f:id:shakemid:20170922230316j:plain

M16 The Eagle Nebula and M17 The Omega Nebula. わし星雲とオメガ星雲。夏の代表的な天体ですね。ノーマルカメラだとちょっと色が出づらい対象です。 BORG 71FL, 7108フラットナー, SONY α7S, 432mm, f/6.1, ISO12800 30s x10, 総露出時間 5分, Sky-Watcher EQ5GOTOで追尾, Lightroomで現像, ステライメージ8でスタック・トーンカーブ調整等, GIMPで微調整。

f:id:shakemid:20170924141111j:plain

NGC869/884 Double Cluster. ペルセウス座二重星団。秋の代表的な天体の一つです。宝石箱のような美しさです。 BORG 71FL, 7108フラットナー, SONY α7S, 432mm, f/6.1, ISO12800 30s x10, ISO25600 30s x10, 総露出時間 10分, Sky-Watcher EQ5GOTOで追尾, ステライメージ8でスタック、トーンカーブ調整等。

f:id:shakemid:20170921220524j:plain

NGC7293 The Helix Nebula. らせん星雲。M57 環状星雲と似ていますがこっちの方が大きいです。そのぶん淡いので都会ではほぼ見えません。 BORG 71FL, 7108フラットナー, SONY α7S, 432mm, f/6.1, ISO12800 30s x10, ISO25600 30s x10, 総露出時間 10分, Sky-Watcher EQ5GOTOで追尾, ステライメージ8でスタック・トーンカーブ調整等, GIMPで微調整。

f:id:shakemid:20170922232531j:plain

M51 Question Mark Galaxy. おもしろい形をした子持ち銀河。400mmではかなり小さいですが形はよく分かります。 BORG 71FL, 7108フラットナー, SONY α7S, 432mm, f/6.1, ISO12800 30s x10, 総露出時間 5分, Sky-Watcher EQ5GOTOで追尾, Lightroomで現像, ステライメージ8でスタック・トーンカーブ調整等, GIMPで微調整。

f:id:shakemid:20170921224549j:plain

M33 Triangulum Galaxy. さんかく座の銀河。銀河の腕がよく写っています。大きな銀河ですが淡いのでこれも都会ではほぼ見えません。 BORG 71FL, 7108フラットナー, SONY α7S, 432mm, f/6.1, ISO12800 30s x10, ISO25600 30s x10, 総露出時間 10分, Sky-Watcher EQ5GOTOで追尾, ステライメージ8でスタック・トーンカーブ調整等, GIMPで微調整。

f:id:shakemid:20170923002827j:plain

M31 Andromeda Galaxy. 秋の天体の代表格、アンドロメダ銀河。文句なくきれいに写ります。 BORG 71FL, 7108フラットナー, SONY α7S, 432mm, f/6.1, ISO6400 30s x10, ISO12800 30s x10, ISO25600 30s x10, 総露出時間 15分, Sky-Watcher EQ5GOTOで追尾, Lightroomで現像, ステライメージ8でスタック・トーンカーブ調整等, GIMPで微調整。

f:id:shakemid:20170923200158j:plain

M45 Pleiades. 夜が更けると東の空に見えてくるすばる。都会でもそれなりに写りますが戦場ヶ原だと青い星雲がはっきりと写ります。 BORG 71FL, 7108フラットナー, SONY α7S, 432mm, f/6.1, ISO12800 30s x10, 総露出時間 5分, Sky-Watcher EQ5GOTOで追尾, Lightroomで現像, ステライメージ8でスタック・トーンカーブ調整等, GIMPで微調整。

f:id:shakemid:20170923211113j:plain

M42 Great Orion Nebula. 冬の天体の代表格、オリオン星雲。夜更けには冬の天体を先取りできる季節です。これも都会でもそれなりに写りますが、はるかにきれいに写ります。 BORG 71FL, 7108フラットナー, SONY α7S, 432mm, f/6.1, ISO6400 x10, ISO12800 30s x8, 総露出時間 9分, Sky-Watcher EQ5GOTOで追尾, Lightroomで現像, ステライメージ8でスタック・トーンカーブ調整等, GIMPで微調整。

夜半過ぎには少し曇りましたが、概ね快晴ですばらしい星空を堪能することができました。戦場ヶ原よかったです。冬は寒さが厳しそうなので、また暑めの季節に訪れてみたいものです。

2017/8/21 北米皆既日食を見てきました

今世紀最高の条件(観測地へのアクセスのしやすさ、晴れやすさなど)と言われた、北米皆既日食を見てきました。皆既日食帯のほぼ中心に位置するオレゴン州ライオンズ(Lyons)という小さな町で、雲一つない快晴に恵まれ、パーフェクトな条件で観測することができました。皆既日食を見るのはこれが初めてで、超感動しました。本当に行ってよかったです。

f:id:shakemid:20170824153137j:plain

皆既日食中のコロナを多段階で合成。 BORG 71FL, 7215 x1.4, SONY α7S, 560mm, f/7.9, ISO100, 1/1000+1/250+1/60+1/15+1/4s, RAW5枚合成, ステライメージ8でローテーショナルグラディエント, トーンカーブ調整, アンシャープマスク等。

f:id:shakemid:20170917193104j:plain

双眼鏡で眼視したイメージを思い出して再現してみました。プロミネンスから外部コロナまで全部見えていて、空は青く見えました。 BORG 71FL, 7215 x1.4, SONY α7S, ISO100, 1/1000+1/250+1/60+1/15+1/4+1+4s, RAW7枚合成, ステライメージ8でローテーショナルグラディエント, トーンカーブ調整, アンシャープマスク等。

f:id:shakemid:20170905102158j:plain

コロナがよく見えるように調整してみました。フルサイズの画角からはみ出るくらいコロナが広がっています。調整の仕方で印象がずいぶん異なりますね。 BORG 71FL, 7215 x1.4, SONY α7S, ISO100, 1/1000+1/250+1/60+1/15+1/4+1+4s 各2~3枚、合計RAW19枚合成, ステライメージ8でスタック、ローテーショナルグラディエント, トーンカーブ調整, アンシャープマスク等。

f:id:shakemid:20170824112115j:plain

皆既日食中のコロナ。1枚だと内部コロナが白く飛んでしまいます。 BORG 71FL, 7215 x1.4, SONY α7S, ISO100, 1/4s, RAW1枚, GIMPAPS-C相当にトリミング, トーンカーブ調整, アンシャープマスク等。

f:id:shakemid:20170824112105j:plain

ダイヤモンドリング。コロナやプロミネンスも見え始めています。 BORG 7215のおかげで、ゴーストはかなり少なめだと思います。 BORG 71FL, 7215 x1.4, SONY α7S, ISO100, 1/60s, RAW1枚, GIMPAPS-C相当にトリミング, トーンカーブ調整, アンシャープマスク等。

f:id:shakemid:20170824112128j:plain

長く露出するとコロナがフルサイズからはみ出るくらいに広がっているのが写りました。地球照に照らされた月面の模様も見えてきました。太陽がたしかに月に隠されているのがよく分かります。 BORG 71FL, 7215 x1.4, SONY α7S, ISO100, 4s, RAW1枚, GIMPトーンカーブ調整, アンシャープマスク等。

f:id:shakemid:20170901215101j:plain

ベイリービーズ。皆既の直前です。 BORG 71FL, 7215 x1.4, SONY α7S, ISO100, 1/8000s, GIMPで調整。

f:id:shakemid:20170901205845j:plain

プロミネンス。α7Sだとちょっと解像度が足りない感じですが、炎のような感じで写りました。 BORG 71FL, 7215 x1.4, SONY α7S, ISO100, 1/1000s x6枚, ステライメージ8でスタック, 調整, GIMPで微調整。

撮影機材

f:id:shakemid:20170822003700j:plain

撮影機材は機動性重視で、ミニボーグを中心に構成しました。旅の荷物の総重量は20kgほどで、追加費用なしで余裕で飛行機に乗れる重さでした。レンズをばらして機内持ち込みにできるのも組み立て式のBORGのいいところです。

  • 望遠鏡
    • TOMYTEC ミニボーグ71FL対物レンズ(BK)【2572】
    • TOMYTEC M57ヘリコイドLIII【7861】
    • TOMYTEC M57ヘリコイドDXII【7761】
    • TOMYTEC ミニボーグ鏡筒DX-LD【6015】
    • TOMYTEC M57/60延長筒S【7602】
    • TOMYTEC 1.4×テレコンバーターGR【7215】
    • TOMYTEC カメラマウントホルダーM【7000】
    • TOMYTEC M49.8延長筒S【7921】
    • TOMYTEC M49.8延長筒M【7922】
    • TOMYTEC カメラマウント ソニーNEX用(Eマウント)【5013】
    • MARUMI ステップダウンリング 72mm → 49mm(部分日食中のみ)
    • Kenko PRO ND1000+ND100 (ND100000相当) 49mm(部分日食中のみ)
  • カメラ
    • SONY α7S
    • SONY NEX-5R(予備)
    • ROWA-JAPAN タイマーレリーズ
  • 赤道儀
  • 三脚
    • SLIK AMT 340HD
    • SIRUI L-20S 雲台
    • SLIK ストーンバッグDX
  • 双眼鏡
    • TO-PLAN Solar Opera 3倍
    • Carl Zeiss Terra ED 42x8 (もちろん皆既中のみ)

71FL+レデューサー7872セット 6472

71FL+レデューサー7872セット 6472

  • メディア: エレクトロニクス

Vixen ポータブル赤道儀 星空雲台ポラリエ(WT) ホワイト 355051

Vixen ポータブル赤道儀 星空雲台ポラリエ(WT) ホワイト 355051

  • 発売日: 2011/11/30
  • メディア: エレクトロニクス

旅行記

半年前

皆既日食は一生のうちには見たいと思っていましたが、行くかどうか迷っていました。北米でアクセスしやすいとはいえ、皆既日食帯に入るのは比較的田舎の州がほとんどで、半年前の時点ですでに皆既日食帯内のホテルはほとんど満室で、公共交通機関も混雑であまり期待できない状態でした。皆既日食帯に入るには、少し離れたところに宿泊し、レンタカーで移動するのがほぼ必須という状況だったので、海外で運転したことがなく、日本でもあまり運転しない私は困ってしまいました。 そんな中、1月にアメリカ居住経験がある友人の1人がポートランド近辺で日食を見に行くというのを聞き、それが後押しになって、私も行くことを決めました。ポートランドはけん玉プレイヤーの友達も多く、いざとなったら頼れるのも理由の1つでした。 3年くらい車を運転しておらず、運転に自信がなかったので日本で何回かレンタカーを借りて練習しました。国際免許も初めて取得しました。国際免許は免許センターに行って2000円払えば誰でももらえます。

撮影機材は天体観測遠征用のものをある程度持っていたのでそれらを使うことにしました。望遠鏡は、そのときに持っていたBORG 45EDIIでも充分に撮影できますが、せっかく海外まで遠征するので新しいものがほしくなり、BORG 71FLを購入しました。

2017/8/17

羽田からロサンゼルスを経由して、ポートランドに入りました。空港近くのAlamoレンタカーでまずレンタカーを借りました。営業所は空港から少し離れていて、数分おきにシャトルバスが運行されています。営業所につくと、予約を確認し、わりとすぐに車に案内されました。日本車がいいと思って日産の車を予約していたのですが、同等の車ということで現代が出てきてちょっとがっかりしました。これはもうしょうがないです。設備をチェックすると、GPSナビを予約していたはずが付いていませんでした。スタッフに確認すると、在庫がなくて、別の営業所に取りに行かなければならないけどキャンセルするか?というようなことを聞かれました。さすがにナビは必要と思ったので待つことにしました。20分くらいして持ってきてくれたのですが、電源コードの接触が悪く、すぐに電源が切れてしまう状態だったので、交換してもらいました。しかし今度は取付の部品が合わず、車に取り付けられませんでした。もう1度交換してもらい、ようやく使えるようになりました。さすがアメリカという感じでかなり適当なので、出発前によく確認した方がよいと思いました。今回は不安だったのでGPSナビを借りましたが、今ならiPhoneアプリと車載ホルダーでも充分かもしれません。

心配だった運転はそれほどでもなく、なんとか大丈夫でした。交通ルールを事前に予習しておいたのと、日本で運転の練習をしておいたのがよかったです。日本との最大の違いは右側通行なので、常に意識しておいた方がよいです。日本と逆で右折は簡単ですが、左折はちょっと怖いです。油断すると逆車線に入りそうになるので、左折時は特に意識が必要です。左ハンドルはあまり気になりませんでしたが、ワイパーとウインカーが左右逆なのは慣れるまで数日を要しました。最初の2日くらいは10回くらいワイパーを動かしてしまいました。

abroad.driver.jp

空港から1時間弱ほど運転してホテルに到着しました。ホテルはポートランドダウンタウンから少し南に行ったところにある↓のホテルにしました。

www.booking.com

半年前の時点で空き部屋が残り少なく、ちょっといい部屋しか空いてませんでした。やたら広く、キングサイズのベッドがある部屋でした。ベッドに枕が5個置かれていて、何に使うのかよく分かりませんでした。

2017/8/18

18日は観測地の下見に行きました。皆既日食当日の朝はポートランドから南に向かう道は大渋滞することが予想されていたので、前日の内にセイラム(Salem)まで移動して車中泊し、さらに南東に向かって皆既日食帯のほぼ中心で観測する計画を立てました。 Googleマップで調べたところ、セイラムから南東に向かうと、ライオンズ(Lyons)という小さな町があり、小学校があったのでそこをめざしてみることにしました。

f:id:shakemid:20170830002407j:plain

ポートランドからセイラムまでは車で1時間弱くらいでした。セイラムはオレゴン州の州都なので、それなりに店などが多く、駐車場で車中泊ができる程度に平和なようでした。比較的アクセスしやすい場所に24時間営業のデニーズがあったので、そこを前泊場所の候補にしました。 セイラムからさらに南東に車で30分くらい走ると、ライオンズに着きました。小学校には芝生の大きなグラウンドがあり、観測に適していそうでした。今は夏休みなので児童はほとんどいませんでしたが、職員の方はいたので、話をしてみたところ、少人数だったらグラウンドで観測してもよいと快く承諾してくれました。トイレも借りることができました。 ひとまず練習で太陽を撮影してみました。

夜はオレゴン州の最高峰、フッド山(Mt. Hood)の方面に走り、天体観測してみることにしました。山に向かって走ると、トイレがある簡易休憩所のようなところがあったので、そこで夜になるのを待ちました。オレゴンは緯度が北緯45度程度と、北海道よりやや北なので今の季節は日照時間が長く、夜8時を過ぎてもまだ少し明るいくらいでした。夜9時を過ぎてくると星が見えてきて、天の川も見えました。しかしこの日は部分的に曇りですっきりと晴れませんでした。なんとか天の川は撮影できましたが、雲が晴れそうになかったので日が変わらないうちにさっさと退散しました。

2017/8/19

19日は、朝食のために朝8時くらいに起きましたが、前日の200km以上の運転と、時差ボケでそのあと午後2時くらいまで寝てしまいました。午後2時は日本時間で朝の6時なので、だいたい日本時間に近い感じで生活することになり、結果的に時差ボケはそれほどなかったような気がします。

午後からゆっくりとローズガーデンに観光に行きました。バラの花と、森の中のトレッキングを楽しむことができました。自然を楽しめるのはオレゴンのいいところです。

夜は星がきれいに見えそうな、マウントフッドビレッジというところを目指してみました。明るい内に到着したかったのですが、時間を読み間違えて夜9時過ぎに到着してしまい、車のライト以外ほとんど真っ暗な状況で、ロケハンに難航しました。携帯の電波も入ったり入らなかったりで、Googleマップも当てになりません。

www.tripadvisor.jp

たまたま広場のような場所を見つけて入ってみたところ、素晴らしい星空で、天の川がはっきりと見えました。この日は雲もほとんどなく快晴で、天体観測にはパーフェクトでした。後から調べてみるとここはゴルフ場だったようです。

満天の星空と天の川。Samyang 14mm f/2.8, SONY α7S, ISO6400, 30s, RAW1枚, iPhoneLightRoomInstagramで編集。

f:id:shakemid:20170901142759j:plain

上の写真を再処理しました。Samyang 14mm f/2.8, SONY α7S, ISO6400, 30s x20枚, LightRoomで現像, ステライメージ8でスタック, GIMPで微調整。

M31アンドロメダ銀河。BORG 71FL, SONY α7S, ISO6400, 60s, RAW1枚, iPhoneLightRoomInstagramで編集。

f:id:shakemid:20170901142820j:plain

上の写真を再処理しました。BORG 71FL, SONY α7S, ISO6400 30s x10枚, ISO12800 30s x10枚, LightRoomで現像, ステライメージ8でスタック, GIMPで微調整。

f:id:shakemid:20170901142807j:plain

立ち上るような天の川。地平線近くまで夕焼けのように赤く写りました。 Contax Carl Zeiss Distagon 35mm f/2.8, SONY α7S, ISO6400, 30s x10枚, LightRoomで現像, ステライメージ8でスタック, GIMPで微調整。

f:id:shakemid:20170901142814j:plain

夏の大三角と天の川。35mmレンズの画角は天の川の幅と合っててよいです。 Contax Carl Zeiss Distagon 35mm f/2.8, SONY α7S, ISO6400, 30s x10枚, LightRoomで現像, ステライメージ8でスタック, GIMPで微調整。

f:id:shakemid:20170916202318j:plain

M27亜鈴状星雲。小さめですがよい発色で写っていると思います。α7SのISO12800はちょい撮りには充分常用できるほどノイズが少ないと思います。 BORG 71FL, SONY α7S, ISO12800 30s x10枚, LightRoomで現像, ステライメージ8でスタック, GIMPで微調整。

2017/8/20

20日も昼過ぎまで寝て、午後にゆっくりマルトノマ滝を見に行きました。道路が混みすぎていて駐車場までたどり着けませんでしたが、なんとか路上駐車することができました。 マルトノマ滝は落差約180mの見事な滝でした。

夜はいよいよ皆既日食の観測地への移動です。夜の時点ではまだ道路はそれほど混んでいませんでした。無事にセイラムにあるデニーズの駐車場に停車することができました。夕食もそれほど待たずに食べることができました。しかし、あれよあれよという間に満席になり、駐車場も満車になりました。やはり、前泊しようとしている人が多かったようです。早めの行動が功を奏しました。

2017/8/21

朝5時頃にセイラムを出発し、日の出前にライオンズに到着することができました。セイラムから東の方向に行く人は少ないと読んでいたとおり、道路はそれほど混んでいませんでした。 日の出前から天気は快晴で、パーフェクトな条件での観測が期待できました。

場所を確保して機材を準備していると、徐々にグラウンドに人が集まってきました。それでも最終的にだいたい30人くらいで、のんびりと落ち着いて観測できました。

太陽が昇り始めたらさっそく望遠鏡を太陽に向け、赤道儀で追尾を開始しました。ノートラブルで好調でした。

日食が始まる直前に、↓のような感じの緊急警報が携帯に送信されてきました。地震でも起きたのかと思ってちょっと驚きましたが、太陽を直接見ないようにとの注意喚起でした。日本だと地震くらいでしか見たことがないですが、こんな使い方もあるのですね。

注意喚起をしても、日食がある度に残念ながら失明する人が出るそうです。なんせ大統領が裸眼で見てしまうくらいですからね。本当に危険なのでダメ絶対です。

www.bbc.com

午前9時過ぎから太陽が欠けはじめました。太陽が半分以上欠けてくると、気温が体感できるレベルで下がり、少し肌寒いくらいでした。また、だんだんと暗くなっているのがわかりました。夕方や、曇りのときとは明らかに違う暗さで、日食独特の雰囲気でした。

部分日食中はタイマーレリーズで自動撮影していたので、太陽双眼鏡で眺めたり、ふつうの双眼鏡で↓のような感じで投影して遊んだりしていました。

皆既の時間が近づいてくると、いよいよ気分が高まってきました。皆既日食が継続している時間はわずか2分しかありません。私は撮影が主な目的ですが、その場で撮影パラメータを考える余裕はほぼありません。あらかじめパラメータは決めておき、予定どおり行動できるようにイメージトレーニングしていました。結果として↓のような感じで行動することができ、98%くらい完璧でした。このイメージ力はけん玉スキルだと思います。

  • 第1接触(欠け始め)~皆既1分前まで
    • ISO100, シャッター速度1/200sに設定, 念のためブラケット撮影1EVx5枚に設定(1/800, 1/400, 1/200, 1/100, 1/50s で一度に撮影)
    • レリーズタイマーで2分おきに自動撮影
  • 皆既1分前~第2接触ダイヤモンドリング
    • 太陽フィルターを外す
    • シャッター速度1/1000sに設定, ブラケット撮影2EVx5枚に設定(1/8000, 1/4000, 1/1000, 1/250, 1/60s で一度に撮影)
    • レリーズで手動連写
  • 皆既中1
    • シャッター速度1/60sに設定, ブラケット撮影2EVx5枚に設定(1/1000, 1/250, 1/60, 1/15, 1/4s で一度に撮影)
    • レリーズで手動連写5回くらい
    • ここで興奮して三脚に足が当たってしまい構図がずれました。カメラの視野内になんとか収まっていたので、10秒くらいで中心に戻すことができました。視野から出ていたらアウトでした。
  • 皆既中2
    • シャッター速度1/4sに設定, ブラケット撮影2EVx5枚に設定(1/60, 1/15, 1/4, 1, 4s で一度に撮影)
    • レリーズで手動連写3回くらい
  • 皆既中3~第3接触ダイヤモンドリング
    • シャッター速度を1/60sに設定
    • カメラを動画撮影に切り替え
    • ここまでで、皆既時間は残り30秒くらいだったようです。
    • ふつうの双眼鏡で観測。広がっているコロナがくっきり見えて感動的でした。
    • 広角レンズで撮影。金星が写りました。
  • 第3接触~第4接触(日食の終わり)
    • 太陽フィルターを付ける
    • 露出1/200sに設定
    • レリーズタイマーで2分おきに自動撮影

皆既中の写真は上の方に掲載しています。

f:id:shakemid:20170824142222j:plain 皆既中の太陽と金星。冬の星座が見えるかと思いましたが、そこまでは暗くなりませんでした。

第3接触が終わると、帰っていく人がかなりいました。私は折角なので最後まで撮影してましたが、最後までグラウンドに残っていたのは私でした。撮影機材は私が一番重装備だったくらいで、重装備な人がほとんどいない穴場でとてもいい観測場所だったように思います。

帰り道は、ライオンズからセイラムまでは混雑もなくたどり着けましたが、セイラムからポートランドの間が大渋滞でした。高速も下道も大渋滞でかなり迂回しましたがそれでも渋滞していて、通常なら1時間弱くらいのところ、5~6時間かかりました。これが行きでなく帰りだったのが救いです。やはり前泊して移動したのは正解でした。

初めての皆既日食観測にも関わらず、最初から最後まで雲一つないパーフェクトな天気で、観測機材も順調で、予定していた観測がほとんどうまくでき、非常に満足度の高い旅になりました。北米行きを後押ししてくれた友人、快く送り出してくれた家族、観測場所を提供してくださった小学校の方、Facebookで地元の情報を教えてくれた友人達と、そのほかにも多くの方のおかげで素晴らしい体験をすることができました。感謝感謝です。 次は2024年にまた北米で皆既日食があるのでまた行きたいですね。日本で次に見られるのは2035年なのでまだだいぶ先ですが、今から楽しみです。

おまけ

壁紙として使えそうな感じに加工してみました。よろしければご自由にどうぞ。

http://www.shakemid.com/pub/total_solar_eclipse_wall_1920.png http://www.shakemid.com/pub/total_solar_eclipse_wall_1920.png

http://www.shakemid.com/pub/total_solar_eclipse_wall2_1920.png http://www.shakemid.com/pub/total_solar_eclipse_wall2_1920.png

Celestron Edge HD 800 にファンを取り付ける

Celestron Edge HD 800 に温度順応のためのファンを取り付けたメモです。

Edge HD はシュミカセなので安定した観測のためには温度順応が必要になります。シュミカセの温度順応は1時間以上かかると言われていますが、できるだけ早く温度順応させるために、サードパーティ製品で、TEMP-estという小型のファンを取り付けるキットが販売されています。 鏡筒の通気穴(チューブベント)にファンを取り付けるというもので、面白い発想ですが、価格は165ドルとちょっといい値段です。 www.deepspaceproducts.com

日本で購入された方の記事によると、17mm角のファンが使われているようです。見た感じなんとなく自作できそうだったので、DIYしてみることにしました。 d.hatena.ne.jp

17mmのファンとなると非常に小さいので、PCパーツショップとかでは売っていないようでした。探してみるとマルツオンラインで、同じような17mm角のファンを取り扱っていました。マルツオンラインは、個人でも1個単位で注文できるので、電子工作のパーツ調達などに重宝します。 購入したのは、日本電産コパル電子の「F17HA-05MC」という型番で、1個1170円でした。私は8000rpmのものを購入しましたが、もう少し回転数が多い11000rpmのものもあります。 www.marutsu.co.jp

注文してから5日ほどで、こんな感じのパッケージで届きました。 f:id:shakemid:20170612085417j:plain

品物はこんな感じです。1円玉より小さい極小のファンです。こんな小さいファンは初めて見ました。 f:id:shakemid:20170612085614j:plain

ケーブル類はPCのパーツを流用することにしました。もっと安いパーツもあると思いますが、PC自作が趣味なので、こんな感じのパーツは余ってます。 f:id:shakemid:20170612085744j:plain

アイネックス ファン用電源延長ケーブル CA-090

アイネックス ファン用電源延長ケーブル CA-090

  • 発売日: 2015/04/28
  • メディア: Personal Computers

アイネックス ファン用電源延長ケーブル CA-092

アイネックス ファン用電源延長ケーブル CA-092

  • 発売日: 2015/04/28
  • メディア: Personal Computers

ファン用延長ケーブルのプラスチックのカバーは外してしまいます。ちょっと強めに引っ張れば外れます。黄色のケーブルは使わないので外してしまいます。 f:id:shakemid:20170612090312j:plain

ファンのケーブルに半田付けします。 f:id:shakemid:20170612093805j:plain

熱圧縮チューブで絶縁しておきます。 f:id:shakemid:20170612100300j:plain

鏡筒にこんな感じのチューブベントが2つあるので、ドライバーで取り外します。 f:id:shakemid:20170612110955j:plain

外すとこんな感じです。プラスチックのパーツに、金属製のメッシュが挟まっていました。 f:id:shakemid:20170612111225j:plain

鏡筒の中が見えます。鏡筒の中に何か落とすと取り出すのにかなり苦労しそうなので要注意です。 f:id:shakemid:20170612111236j:plain

二股電源コネクタのプラスチックのパーツを外します。これも少し力を入れて引っ張れば外れます。こちらも黄色のケーブルは使わないので外してしまいます。 f:id:shakemid:20170612101621j:plain

こんな感じでケーブルを通します。メッシュは端を折ってケーブルが通るようにします。 f:id:shakemid:20170612111825j:plain

二股分岐ケーブルに、プラスチックのパーツを再度取り付けます。赤と黒のケーブルの位置を間違えないように注意します。 f:id:shakemid:20170612112246j:plain

ファンを取り付けます。ちょっと不格好ですが針金で縛りました。寸法的には20mm角くらいのファンでも取り付けられそうな気がします。(2017/6/28追記 20mmのファンを取り付けられました) f:id:shakemid:20170612113354j:plain

一方が吸気、一方が排気になるように逆向きにファンを取り付けます。 f:id:shakemid:20170612113941j:plain

鏡筒の中に、二股分岐ケーブルが付いていない方のファンの電源ケーブルを通します。なるべくグリスまみれのネジに触れないように注意します。 f:id:shakemid:20170612114442j:plain

チューブベントのパーツを取り付けます。ファンがきれいに収まっています。 f:id:shakemid:20170612115928j:plain

二股電源コネクタにファンの電源ケーブルを接続します。 f:id:shakemid:20170612114756j:plain

ふたをすると電源コネクタが外に出ている形になります。 f:id:shakemid:20170612114959j:plain

USBコネクタを取り付けて完成です。 f:id:shakemid:20170612115135j:plain

試運転。小さいファンですが風を感じるので、それなりに効果はありそうな気がします。 f:id:shakemid:20170612115747j:plain

材料費4000円弱でファンを取り付けることができました。惑星がよく見えるシーズンなので、きれいに見えるようになるといいなあ。

(2017/6/28追記)

20mm角のファンを取り付けられそうだったので取り付けてみました。

20mm角のファンはSUNON(サンオン)社くらいしか作っていないようで、あまり選択肢がありません。「MC20100V2-000U-A99」という型番のものを購入しました。 www.marutsu.co.jp

17mm角のものと比べると一回り大きいです。性能は3倍です。F17HA-05MC が 0.5CFM(立方フィート/分)に対し、MC20100V2-000U-A99 は 1.5CFM です。より温度順応が早くなると期待できそうです。 f:id:shakemid:20170626154910j:plain

チューブベントのパーツに取り付けてみました。こっちの方がぴったりですね。 f:id:shakemid:20170626164332j:plain

梅雨で天気がすっきりせず望遠鏡の出番がありませんが、機材のメンテナンスをするにはいい機会かもしれませんね。梅雨明けが楽しみです。