ヨーロッパけん玉交流 in ドイツ 2011/8


ヨーロッパにおけるけん玉の普及状況

近年、インターネットによる情報通信の発達により、けん玉の愛好者が世界中に爆発的に増加しています。YouTube(2005年サービス開始)でけん玉の動画を検索すると、世界のけん玉プレイヤーの高度な技に驚かれることでしょう。また、Facebook(2006年サービス開始)では、世界中のけん玉プレイヤーが交流を深めています。特に顕著なのがヨーロッパです。技術的に日本のトッププレイヤーに匹敵するレベルのけん玉プレイヤーが現れており、多くの国で自主的に大会も開かれています。
ヨーロッパにおけるけん玉普及の中心的な役割を担っているのは、イギリスのプロのジャグラーであるThe Voidさんです。日本人のジャグラーがけん玉を披露しているのを見たことをきっかけにけん玉に魅せられ、2006年ごろからヨーロッパ各地で精力的にけん玉の普及活動を行っています。私は2008年から彼と連絡を取り合い、ずっとヨーロッパの大会に参加したかったのですが、なかなか実現できませんでした。
ヨーロッパでは毎年、世界最大規模のジャグリングの祭典であるEuropean Juggling Convention(EJC)が開催されます。その中で、Voidさんを中心に、European Kendama Open(EKO)が開催されています。今年は、地理的な条件のよいドイツ・ミュンヘンでの開催ということで、史上最大の規模になると言われていました。半年以上前から計画を立て、日本けん玉協会との交流も深いSebastian Hohentannerさんがミュンヘン在住ということも後押しになり、日本から、六段3名で参加することになりました。Voidさん、Sebastianさんをはじめとするヨーロッパ各地のけん玉プレイヤーと連絡を取り合い、すばらしいけん玉イベントになることを確信しました。

EJC2011でのけん玉普及活動

8/7〜9にかけて、Voidさん、Sebastianさん達と協力し、けん玉初心者から上級者までを対象としたワークショップ(けん玉教室)を開催しました。EJC2011の期間中、世界から5万人を超えるジャグリング愛好者が会場を訪れますので、世界に日本のけん玉をアピールする絶好のチャンスです。
バイエルン放送(ドイツの主要放送局の1つ)から取材があり、向井六段とSebastianさんの同僚のMarcさんがスタジオで生出演し、けん玉の魅力を伝えました。放送の様子はインターネットでも公開されていますのでぜひご覧になってください。http://www.br-online.de/bayerisches-fernsehen/schwaben-und-altbayern-aktuell/jonglieren-artist-studiogast-ID1312884968232.xml
ヨーロッパのけん玉プレイヤーは、国境を超えて交流を深めており、大きなけん玉コミュニティーを形成しています。イギリス、ドイツ、オランダ、スイス、チェコなど、インターネットを通して知り合った多くのけん玉プレイヤー達と実際に会うことができました。EJCはお祭りですので、みんなで昼間からビールを飲んで深夜まで騒いでいました。ヨーロッパ人がビールを飲んで大騒ぎしながら夢中でけん玉に興じている光景はなかなか想像しづらいと思いますが、彼らは本当によく飲み、よく遊びます。彼らは日本人以上にけん玉を楽しんでいるかもしれません。ヨーロッパではけん玉が子どもの遊びだと思っている人はいません。大の大人が本気でけん玉を楽しんでいる光景に、けん玉の原点、そしてけん玉の可能性を見たように思います。ぜひ、YouTubeFacebookなどを活用して海外のけん玉プレイヤーと交流してみてください。

EKO2011

8/10に、第3回 European Kendama Open(EKO2011)が開催されました。ヨーロッパを中心に13カ国53人の選手がエントリーしました(イギリス、ドイツ、オランダ、スイス、チェコ、フランス、ポーランドフィンランドノルウェーオーストリア、スペイン、アメリカ、日本)。13カ国もの選手がエントリーするけん玉の大会は今のところEKOしかないでしょう。ギャラリーも200人を超え、非常に盛り上がりました。技が成功する度に歓声が上がり、敗者にも惜しみない拍手が送られるとても気持ちのよい雰囲気でした。
初心者の部(Beginners Division)、上級者の部(Advanced Division)、タイム競技の部(Speed Trick Division)、フリースタイルの部(Best Trick Division)の4部門が行われました。初心者の部では、日本人3人はスペシャルゲストとして紹介いただき、審判を務めました。上級者の部の結果は、優勝 向井選手(日本)、準優勝 Nicolas選手(スイス)、3位 嶋寺選手(日本)、4位 Matt選手(イギリス) となりました。タイム競技の部の結果は、優勝 秋元選手(日本)、準優勝 嶋寺選手(日本) となりました。
上級者の部で準優勝となったNicolas選手が今年のヨーロッパチャンピオンとなり、来年のEKO2012に招待されることになりました。また、大会の順位によって、ヨーロッパの各国のチャンピオンも選出されていました。多くの国の選手が参加するEKOならではの方式だと思います。
日本のけん玉プレイヤーの実力を見せることはできたと思いますが、ヨーロッパには日本の六段と互角に戦えるレベルのプレイヤーがいることもわかりました。大会の模様は動画で公開されていますのでぜひご覧になってください。http://www.kendama.co.uk/EKO2011video.html

東日本大震災復興支援チャリティーオークションの開催

東日本大震災の後、世界のけん玉プレイヤーが日本に向けて励ましのメッセージを送ってくださいました。EJCの会場内でも、あちこちで日本を応援するメッセージが掲げられていました。8/11に、大震災の復興に役立てるべく、私物および日本けん玉協会より提供いただいた貴重なけん玉を商品に、チャリティーオークションを開催しました。
オークションの目玉商品は、緑(限定色・中古)、白、青x2、金の5本の夢元です。特に限定色の緑の注目度は高く、Facebookで出品を発表した後複数のプレイヤーから裏取引をもちかけられるほどでした。海外では夢元を所有していることはもはやステータスになっており、オークションで20,000〜30,000円相当で取引されることも珍しくありません。EJCでも誇らしげに夢元を見せ合っているプレイヤーが何人もいました。
オークションの前半は、日本けん玉協会から提供いただいた限定色のけん玉や日本人プレーヤーのサイン入りけん玉などを出品しました。30〜50ユーロ程度と、なかなかの金額で落札いただきました。オークションの後半になって、夢元が出品されると会場の熱気が明らかに変わりました。青は120ユーロ(約13,000円)、金は180ユーロ(約20,000円)とかなりの高額で落札されました。圧巻はここからで、緑の限定色はなんとアメリカから電話で参加してくる入札者までいて、その方が310ユーロ(約34,000円)で落札されました。白も非常に人気で、なんと350ユーロ(約38,000円)で落札されました。
チャリティーオークションで合計1845ユーロ(8/12時点で約20万円)の収益を得ることができました。収益金は日本けん玉協会および私より、日本赤十字に寄付させていただきました。

級・段位認定会

8/11,12に級・段位認定会を開催しました。級と準初段については、日本けん玉協会公式の認定証を発行しました。段位については、日本けん玉協会の規則では段位は一つずつしか受験できず、しかも日本けん玉協会に入会しないといけませんが、海外においては現実的ではありませんので、非公式ではありますが1級指導員の署名で認定証を発行することにしました。段の試験では、まずもしかめを行い、クリアした回数に応じて挑戦できる段位の上限を定める方式をとりました。たとえば、もしかめを500回できた場合は初段の技から始めて三段まで受験できることになります。途中で三段の規定に達しない技があった場合は、二段が上限になります。
8/11は14名の認定を行い、準初段1名、1級7名、3級2名、4級2名、5級1名、7級1名の合格となりました。ヨーロッパの選手は総じてもしかめが苦手で、1日目は誰も200回に到達しませんでした。
8/12は5名の認定を行い、Voidさんがもしかめ795回、Alexさんが240回を達成しました。私はVoidさんの三段の試験を担当しました。Voidさんはプロのジャグラーだけあって集中力がすばらしく、震えもほとんどありませんでした。また、カメラ撮影をシャットアウトするほどの真剣さで、かなりの練習を積んでいることが想像できました。一回転灯台までをクリアし、タイム競技Bも82秒でした。合格を告げると、涙を流して喜んでくださいました。隣では、Alexさんも初段の認定に合格し、涙を流したそうです。大の大人が、合格に涙を流して喜んでくださったことに私も深く感動しました。この日は、三段1名、初段1名、準初段2名、3級1名の合格者となりました。

EJC2012に向けて

けん玉はすでに日本だけのものではなくなっています。また、海外のけん玉プレイヤーは日本のけん玉プレイヤーと日本けん玉協会に特別な敬意を抱いています。今後も、海外のけん玉プレイヤーと交流することは、世界にけん玉を普及する上で不可欠でしょう。
来年のEJCは、2012/7/28〜8/5の日程で、ポーランド・ルブリンにて開催されることが決定しています。彼らとの再会が今から楽しみです。